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マクロスシリーズ最新作『マクロスΔ』河森正治×安田賢司×根元歳三スタッフインタビュー全文掲載

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好評放送中のマクロスTVシリーズ最新作『マクロスΔ』。早くもBlu-ray&DVDが7月より発売されることが決定! そこで今回は、2015年末から期間限定で配信された第1話の先取りエディション(第0.89話)を軸に、制作準備時の秘話から本放送の見どころまでを、総監督の河森正治さん、監督の安田賢司さん、シリーズ構成の根元歳三さんという本作のメインスタッフである3人に話を伺いました。

複数の星をめぐることで広がる物語のスケール感

──本作の設定はどういう流れでできたのですか?

河森 企画のわりと初期段階から、戦術音楽ユニットのワルキューレとΔ小隊を想定していて、大体のメンバーは決まっていました。ただ、そのときは、空中戦の技術を磨いていく空中戦技競技会を中心とした、パイロットたちと歌の連携作戦を考えていました。

安田 第一印象からだいぶ変わりましたね。キャラクター数も当初からだいぶ増えましたし、サブキャラクターだったものからもだんだん広がっていったりして。これまでのシリーズの歴史を踏まえてどこまで何を突っ込むかというところも最初から決まっていたわけではありませんでした。余裕を持って始めていたんですけど、そこからはみ出るぐらいになっていきましたね。

河森 当初は、明確な敵がいるというよりは、ライバルチームがいるという形でした。元々の部分は、『マクロスプラス』に寄せていたんですよ。『プラス』のときは対抗するそれぞれの開発チームにイサムとガルドがいて、ミュンやバーチャルアイドルのシャロンが歌で絡んで、三角関係になるという構図でした。今回の『マクロスΔ』の初期案は、空中戦のチームに対して歌を聴かせることで、よりよいフライトができるようになる話を考えていました。飛行機をどう飛ばすか、歌をどう歌わせるかなど、最初は実戦訓練モノであり競技モノの要素が強かったですね。安田監督と根元さんに入っていただいたのは、そのあたりからですね。

安田 僕とアニメーションプロデューサーの江口さんから「やっぱり敵が欲しいよね」って話が持ち上がり、具体的にキャラクターを作っていくうえで根元さんに入ってもらいました。

根元 参加したときの僕の第一印象は「あ、今度のマクロスは1年やるんですか」だったんです(笑)。※1年分の要素があるということ

一同 (爆笑)

根元 とにかく盛りだくさんで。

河森 『マクロスF』のTVから8年、劇場版から5年経ちますが、作っている側からするとそんなに経った印象がなくて。ワルキューレを戦術音楽ユニットにした理由も、女の子2人に歌わせると、もうどうやっても『マクロスF』と被るなと。なので、『マクロスF』の放映中から、もし次に作るなら、ユニットモノかなとは考えていました。あとはチームプレイですね。チームでしか描けないドラマを意識して作りたいとは思いましたね。チームといえば、普通に考えたら、第1話に空中騎士団は登場しなくてもいいわけですよ。ワルキューレとΔ小隊がチームプレーでヴァールを鎮圧したところで終わらせる。それで、第2話からあらたな敵が登場っていう展開でもいいわけですからね。

安田 実際、はじめはそんな感じでしたよね。第1話に空中騎士団は出ない予定でしたから。

安田 ホントにチラっとぐらいかなと。ですが、実際に映像になったら結構な説得力と存在感が出てしまったので、これはやっぱり最初から見せないとダメだなと。音が入って映像になると、想像していたものと印象が違いましたよね。

河森 今までのマクロスシリーズにおいて空中騎士団のようなテイストの敵を描いてこなかったおかげで、シーンの短さに比べて、空中騎士団や風の王国の存在感をかなり提示できたかなと思っています。空中騎士団のメンバーも、最初は3、4人だったはずなのに、どんどん増えてきちゃって。

根元 最初は(第1話で)しゃべらせるつもりもなかったですからね。あんまり人数が少ないと軍隊としての説得力に欠けるので、とりあえずしゃべらなくていいからモブで後ろに何人かいて、名前を付けておこうって話だったんです。ところが、いつの間にか自己主張をする人たちになってきて。

河森 やっぱり空中騎士というだけあって、現代の軍隊とか未来の軍隊というよりは、どこか騎士物語の世界に住んでいるような人たちが、たまたま戦闘機を手に入れてしまったようなノリです。ある種、見得を切ったり、名乗りを上げたりするのが当たり前なイメージなんです。とはいっても、1話では作戦上、隠密で来てはいるんですが。最初は、空中騎士団の戦闘機は来るんだけど、キャラは映さないでおこうかなという話もしていたんです。

根元 第1話では謎の戦闘機が現れて「何なんだ?」と思わせて終わり!くらいのつもりだったんですけど、少しずつ変わっていきました。

河森 いざコンテを描きはじめると、つい活躍させてしまいたくなって(笑)。そういう意味では、今後、空中騎士団側はじわじわと謎が明かされて素性がわかっていくし、今から言うのもアレですが、シーズン後半にさしかかったところで頭の話数を見直すと、「ああ、そういうことだったんだ」とわかることが多発するだろうと思います。

──ワルキューレの表現は『AKB0048』の経験から?

河森 そうですね。この3人とも『AKB0048』に関わっていますし(笑)。あのときにチームモノってすごく面白いなと思ったんですよ。個人で描くだけじゃない面白さとか葛藤とか、チームでなければ描けないものがあるなと。それから、ワルキューレのコスチュームチェンジ。あれは変身ではなくて空間映像によるコスチュームチェンジです。『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の頃から『マクロスF』にいたるまで、まったく同じことをやっているんですけど、なぜかコスチュームチェンジのあとで台詞をしゃべらせると「変身」だと思われちゃうんですよ(笑)。不思議ですよね。

根元 キメ台詞があって、ポーズをつけちゃうとなぜか「変身」になっちゃう(笑)。魔法少女じゃないんですけどね。

河森 まあ、進化したテクノロジーは、見た目は魔法と大差ないですからね(笑)。さかのぼると、『マクロスプラス』ではミリタリー方向に寄せたシリアス路線だったので、『マクロス7』はメカファンからあえて総スカンを食らうように作ろうってことでスタートしたんです。企画打ち合わせでは、メカファンから「ふざけるな!」って言われるように作ろうと(笑)。マクロスシリーズは毎回違う路線にチャレンジするのがポリシーなので、『Δ』でもと(笑)。

──ワルキューレは防御がベースになっていました。

河森 彼女たちは歌でヴァールに対抗するけれど、直接倒すための武力は持っていない。そこは「戦う」というよりは「守る」わけです。マルチドローンがよい例ですね。マルチドローンに関して言うと、安田監督から、今までにないバルキリーの新しい戦い方はないかという話が出て、いろいろ考えてみたんです。これだけドローンが流行っていますからね。『AKB0048』のときのように、飛ばしたパネルに乗せると似てしまうので、今回はバリアのような演出装置を思いついたんです。

根元 マルチドローンは脚本段階にはなかったので、映像を見たときに「人形みたいなものが踊ってますけど、何ですかこれ!?」って。

安田 「凄いことになってる!」って(笑)。

河森 人形は後から思いついて足したんです。デジタルチームから「今頃言うんですか!?」って。マルチドローンだけじゃ寂しかったんですよ。ドローンがいっぱい浮いていて、あそこにキャラの顔が映ってるだけじゃ、どこか物足りないなと。そこで、ドローンの擬人化だ!と

──戦いのバリエーションを増やすために、バルキリーのCGシーンにもとても力が入っていたと思います。

安田 そうですね。ビジュアル的には、やっぱりチーム戦ということで、今まで画面内に1機しかいなかったはずが、編隊飛行したり、1機が戦っているところに援護で入ってきたりさせています。そういうシーンでは、ワンカット・ワンアクションじゃなくなっていくわけなんですが、チーム感は出せたし、実際ドラケンⅢにしろ、ジークフリードにしろ、編隊飛行で飛んでいる映像はかっこいいですしね。

河森 『超時空要塞マクロス』でも編隊飛行はやっているんですけど、見栄えが全然違うんですよ。『超時空要塞マクロス』では3〜4機でしたが、それが5機、6機になると本当に編隊に見える。今回やってみて実感しました。

先取りエディションを超えるさらなるクライマックス!

──バジュラのような異生物感を担う役割として、第1話先取りエディションではゼントラーディがヴァール化を?

河森 明らかに異星人がたくさんいる世界というのをわかりやすくするためです。ただ、今作で初めてマクロスシリーズを観る人にとっては「一体何なんだ?」と思わせてしまうかもしれませんが、一か八か「これはシリーズものだから許してね」と。

根元 気になった方はネットで調べてくれるので、情報量がある分には問題ないかなと。

──『超時空要塞マクロス』世代へのサービスも?

河森 もちろん。せっかく久しぶりにリガードやグラージを出すわけですからね。何十万年も量産されていた機体だから、そんなに簡単に古びるわけじゃなく、まだまだ現用です。リガードなんて超原始的な量産機体で、頭部のビーム砲は手で動かす設定なんですよ(笑)。

一同 (爆笑)

河森 せっかくゼントラーディが巨人なので、腕力も強いということで(笑)。

──第0.89話は、第1話として本放送されるときには何か手を加えられるのですか?

河森 そうですね。実は最後に少し追加するんです。0.11の分が付くというか。0.89話の0.89は、「ヤック・デカルチャー!」ではありません(笑)。語呂がかかってはいますけどね。

根元 真の結末が待っているわけですね(笑)。

河森 実は0.89話のラストまでがある意味「ボーダーライン」で、あの後が本当の「いけない」なんです(笑)。まだ「ボーダーライン」を越えていないんですよ。0.89話でも十分に越えているように見えますが、あれをさらに越えるのが第1話のクライマックスなんです。

──フレイア役の鈴木みのりさんはいかがでしたか?

河森 彼女がオーディションで決まって、フレイアの天真爛漫で感情豊かな感じが凄く魅力的に表現できたなと。ただ、第1話のアフレコの際、根元さんと「これ、新人声優さんに要求する脚本じゃなかったね」と(笑)。

根元 こんなシナリオを、演技経験のない人に我々はやらせようとしていたのか、シナリオを作る際にそんな配慮は何もしていなかったぞと。

河森 それなのに鈴木さんはよく応えてくれました。オロオロと話したりコミカルなシーンって、ものすごく難しいのにね。

根元 しかも訛ってるんですよ。

河森 訛っててあれをやらせるなんて、鈴木さんじゃなかったら危なかったかもしれないですね。

──0.89話のEDのキャストが謎の文字になっていました。

根元 それぞれのキャラクターの星の文字なんです。

河森 2つの星の文字ですね。製作委員会側でもキャストの名前を伏せて謎解きにしたいということで、あの形になったんです。面白いですよね、こういう試みって。ただ絶対すぐに解読されるだろうなと。1日はもたないだろうと思っていたら、数時間ももちませんでした(笑)。

──読者へのメッセージをお願いします。

根元 いろんなところにいろんなモノを含みながら、いろんな方向に飛んだりはねたりしていく物語になっています。毎回いろんなテイストを楽しんでもらえると思いますので、最後までじっくり観てもらえればと思います。

安田 フレイアとハヤテは気持ちのいい2人ですけど、話が進むにつれていろんな障害だったりつまずきも出てきます。そこを彼らなりにどういう風に乗り越えていくのか、また、乗り越えたことが成長につながって、さらにキャラクターの魅力になっていくように見せていければと思います。

河森 今回、「チームプレイ」をテーマのひとつにしています。安田監督を中心とした演出チームがあり、シリーズ構成の根元さんを始めとするシナリオチーム、まじろさん、進藤さんを始めとする作画チームや、デジタルチーム、音楽制作チーム、キャストチーム、音響・SEチームを含め、いろんなチームの個性が文字通りケイオスのように絡み合って、新しい『マクロス』が見えてくるのがすごく楽しいんですよ。新しい渦が今動き出して、まさに「いけないボーダーライン」を超え始めているので、この先どこへ向かうのか、最後まで全力で突っ走りたいなと思っています。ご期待ください。

の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。

PROFILE

河森正治(かわもりしょうじ)
1960年2月20日生まれ、富山県出身。サテライト所属。『超時空要塞マクロス』で主役メカ、バルキリーをデザインし脚光を浴びる。同作の劇場版で監督デビュー。以降『マクロス』シリーズや『アクエリオン』シリーズなどを世に送り出す。

PROFILE

安田賢司(やすだけんじ)
1972年8月17日生まれ、栃木県出身。サテライト所属。演出を経て『ドッとKONIちゃん』で初監督。『しゅごキャラ!』『アラタカンガタリ 〜革神語〜』『創勢のアクエリオンEVOL』などの作品を手がける。

PROFILE

根元歳三(ねもととしぞう)
1974年1月10日生まれ、新潟県出身。『妖狐×僕SS』『ログ・ホライズン』をはじめ、数多くの作品でシリーズ構成・脚本を務める。現在『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』にも脚本で参加。『マクロスΔ』ではシリーズ構成を担当。

<放送情報>
2016年4月3日よりTOKYO MX他にて放送開始!
■TOKYO MX:2016年4月3日より毎週日曜22時30分〜
■毎日放送:2016年4月5日より毎週火曜27時〜
■テレビ愛知:2016年4月6日より毎週水曜26時5分〜
■テレビ北海道:2016年4月6日より毎週水曜26時5分〜
■TVQ九州放送:2016年4月4日より毎週月曜26時30分〜
■BS11:2016年4月5日より毎週火曜24時〜
※放送日時は予告なく変更になる場合がございます。

<Blu-ray&DVD発売情報>
マクロスΔ 第1巻 【特装限定版】
2016年7月22日発売
Blu-ray特装限定版:¥7,800(税抜)
DVD特装限定版:¥6,800(税抜)

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