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『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』長井龍雪監督インタビュー

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2015年10月から放送され、高い人気を誇ったTVシリーズ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』。2022年11月15日には、ファン待望のスマートフォンアプリ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ G」がサービス開始。TVシリーズ本編の物語を追体験するモードや、さまざまなキャラクターに焦点を絞ったショートアニメーション付の完全新作の物語が展開する『サイドストーリーズ』、新たな主人公が活躍する新作ストーリーの『ウルズハント』から選んでプレイすることができる。『ウルズハント』は、TVシリーズから引き続き、長井龍雪さんが監督を務めており、まさに正統なスピンオフとも言える内容となっている。そこで今回は、その長井監督に改めて『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の誕生の経緯と作品に込めた思いや、最新作『ウルズハント』への意気込みを伺った。

──サンライズ作品に関しては、アニメーションのお仕事をされる以前から触れられていたのでしょうか?

長井自分のちょっと上の世代から僕らくらいまでは、富野由悠季さん作品の直撃世代なんじゃないかと。僕は小学校の時に『機動戦士Zガンダム』(以降『Zガンダム』)をリアルタイムで視聴していて、そこから富野さんのロボットアニメを順繰りに観ていたので、サンライズのロボットアニメで幼少期は形成されているような感じですね。

──その後も引き続きガンダム作品には触れられて来られたのですか?

長井TVでは『機動戦士ガンダムZZ』を続けて見て、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は劇場に観に行きました。あとは『新機動戦記ガンダムW』は見ましたね。その後少し間が空いて、『機動戦士ガンダムSEED』の頃は上京してすでに業界に片足を踏み入れているような時期でした。もちろん、その頃は自分がガンダムシリーズ作品を作るなんて思ってもいなかったです。

──長井さんは、ガンダムシリーズ作品のどのようなところに魅力を感じていたのでしょうか?

長井やはり、「リアルロボットアニメ」という部分ですね。スーパーリアルというわけではないのですが、リアリティを感じられるSF感のあるロボット作品というのがインパクトが強くて。あと、ストレートに「カッコいい」と思える話というのも印象的でした。『Zガンダム』を見たのは小学生の時だったので、内容を全部理解はしていなかったと思うんですが、それでも引き込まれる要素があって、ガンダムシリーズ作品の「大人っぽい格好良さ」という部分に魅了されていたなと思います。

──『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』ではどのような流れで監督を務めることになったのでしょうか?

長井プロデューサーの小川正和君とは、村瀬修功さんが監督をされた『ウィッチハンターロビン』という作品で、僕が演出、小川君が制作進行という形で交流があったんです。その後、『機動戦士ガンダム00』のエンディングの依頼を受ける形で再び接点ができました。それから少し経って、ちょうど僕が『とある科学の超電磁砲』という作品が終わったあたりで、小川君から「新しい企画を動かすので、一緒にやりませんか?」と声をかけてもらって。それが『鉄血のオルフェンズ』になるわけですね。とは言え、お話をいただいた当時は企画内容も未定だったので、自分から「こんな話はどうか?」と投げかけて、その後ライターさんとも一緒になって作品の企画を組み上げていきました。

──当時、新しいガンダムシリーズ作品を立ち上げるにあたって、サンライズ側から何か要望のようなものはあったのでしょうか?

長井ほぼ無かったですね。強いて言うなら、王道ではなくちょっと変化球をくださいと。本当にそれくらいで、あとは完全に自由でした。

──『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の制作にあたって、どのような要素から作品を組み上げていかれたのでしょうか?

長井「ガンダムっぽさ」とは何だろうと考えたときに、「少年が戦争に参加する」という要素が大きいと感じて、そこから逆算していきました。昔とは変わってきた当時の社会情勢も踏まえて「今、少年が戦う話とはどういうものか」を考えるところからスタートしています。

──鉄華団という組織は、民間警備会社でありながら、不良仲間的な雰囲気にも見えましたが、そこにはどんな狙いがあったのでしょうか?

長井リアルな軍隊ものよりも落とし込みやすかったのが今のラインでした。当時はヤンキーものという意識はそこまでしていなかったのですが、僕自身が昔から暴走族漫画が好きだったこともあって、作品にそういう空気感が出たのだろうと思います。

──鉄華団からは思想というよりも仲間同士の「絆」が伝わってきたことが、ファンの感情移入がしやすいポイントだったのかと思います。

長井「国のために命をかける」という考え方は、ファンタジーのように捉えられてしまうかもしれない。では、何のために戦うのかという落としどころを探した結果が、必然的に作品内で描かれたような形になったんだと思います。

──作品を作り上げる中で、「ガンダムらしさ」は意識しましたか?

長井そこはむしろ縛られてなかったというか。『機動武闘伝Gガンダム』がガンダム同士が殴り合うような作品で、いろんな「ガンダムらしさ」の垣根を取り払ってくれたと思っているので、少年が戦争に関わるという根っこの部分は大事にしながらも、あとは自分たちがその中でどう見せるかということを考えていました。もちろん、タイトルとしての『ガンダム』の重みはあって、伝統的にサンライズさんが長年作り続けてきた作品の新しいタイトルであるというプレッシャーはありましたが、だから「何かをこうしなくちゃいけない」という部分は無かったです。

──『鉄血のオルフェンズ』におけるモビルスーツの分類は、共通のフレーム構造を持っているというものですが、その設定も長井さんが出されたものですか?

長井基本的な設定は自分の方で考えて、デザイナーさんにデザインをお願いしました。最初のフレーム部分が固まるまでが大変でしたね。複数のモビルスーツ間で共通のフレームになるので、いわゆる骨格段階のものを作りたいというのを理解してもらう必要があって。デザインをお願いする時も、基準となるフレームを決め込むのに苦労しました。設定はもちろん、やはりロボットとして格好良くないと始まらないですからね。バンダイさんからプラモデルが出たときの、商品としての魅力も考えつつやらせていただきました。

──もうひとつ、『鉄血のオルフェンズ』におけるモビルスーツの特徴として、ビーム兵器よりも打突系の武器がメインというところもありますね。

長井当時はビーム兵器の新しい表現に難しさを感じていたというのもあります。それこそ、劇場版の『Zガンダム』を見て、ビーム・ライフルの表現やビーム・サーベルの表現がものすごく先鋭化していて、映像表現としてここに改めて挑むのは大変だなと。一方で、何かしら制約をつけて作品的に取り組む部分をひとつ作ろうという気持ちもあって、ビーム兵器無しだとどんな戦闘表現ができるのかを『鉄血のオルフェンズ』でチャレンジさせてもらいました。あと、単純にメイスのような武器で殴るというようなものが好きだということはあるんですけどね。

──物語を描くにあたって大事にした要素はどのような部分でしょうか?

長井三日月とオルガの関係性はずっと根っこにありました。あとはもう鉄華団の少年たちの生き様をしっかり描こうと精一杯取り組みました。彼らはいろんな無茶をしながら突き進んでいきますが、そこから逆算しつつ物語が出来上がっていった感じがあります。

──「鉄血のオルフェンズ G」では、外伝的な新作『ウルズハント』やTVシリーズキャラの新しいショートエピソード『サイドストーリーズ』が新たに描かれますが、スマートフォンアプリとして提案があった際にはどのような感想を持たれましたか?

長井『鉄血のオルフェンズ』の本編が終わってすぐに「ゲームを作りたい」というお話をいただいたんです。その時は、ゲームを開発する方が主導の企画だと思っていたので、自分がお話を考えるなんて想像もしていませんでした。企画が進む中で、ゲーム用のオープニングを作ってほしいという依頼があったので、「それくらいはやりましょう」とOKを出すと、今度は「サブストーリーを入れるので、そこもお願いしたい」という形で話が広がっていきました。

──それが『ウルズハント』の始まりということですね。では、最初から『ウルズハント』を作るのがありきのお仕事ではなかったということですか?

長井当初は、監修程度だと思っていたんですよ(笑)。ストーリーを考えるにあたっては、TVシリーズ本編が終わったばかりで、次はわりと緩めの話で『鉄血のオルフェンズ』の世界観を広げるようなものにしようというのだけが決まってスタートしました。そこから、宝探しをメインにした感じの内容を考えていきました。最初は、1回ごとに短い話で、ひとつのお宝をみんなで取り合うようなイメージだったんですが、肉付けするうちにどんどんどん現在のような形に変わっていった感じです。でも、ベースの部分は変わっていないので気軽に楽しんでいただければと思います。また、『ウルズハント』ではTVシリーズ本編では描かれなかった「厄祭戦」についてのことや、「厄祭戦」時に作られた個性的なモビルスーツもたくさん出てくる予定なので、そこを楽しみにしていただければと。

──鉄華団が活動してその世界に与えた影響というものも、『ウルズハント』では感じ取れますね。

長井そうですね。そうした部分も本編を知っている方には楽しんでもらえると思います。

──TVシリーズ本編に登場したキャラクターたちを描く『サイドストーリーズ』に関してはいかがですか?

長井こちらは、キャラを好きになってくださった方に感謝の気持ちを込めて作らせてもらっています。新たに描かれた彼らのストーリーを見ていただきたいなと思います。

──TVシリーズに続いて、スマートフォンアプリ「鉄血のオルフェンズG」にも関わっていることに関する感想はいかがですか?

長井きちんとしたアニメを作るという実作業としての大変さはあるんですが、やはりひとつの作品でこんなに長く、いろいろとやらせていただけているのはありがたいですね。第1期の放送開始から8年目に入ってからも、こういった形で取り上げてもらえるのは本当に幸せなことだと思っています。

──では、最後に『鉄血のオルフェンズ』ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

長井『ウルズハント』アプリ自体は、上手い下手は関係無く楽しんでもらえるものになっています。完全新作ですのでぜひご覧ください。『サイドストーリーズ』は、本編のキャスト陣がフルボイスで喋り、新作アニメーションもありますのでファンの方に喜んでもらえると嬉しいです。本編追体験のモードもあるので、TVシリーズも思い出しながらプレイしていただけるのではないかと。合わせて楽しんでいただければと思います。

PROFILE

長井龍雪 ながい・たつゆき
●1976年、新潟県生まれ。アニメーション監督、演出家。『ハチミツとクローバーⅡ』(06)で監督デビュー。代表作に『とらドラ!』(08)、『とある科学の超電磁砲』(09)『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11)、『あの夏で待ってる』(12)、『心が叫びたがってるんだ。』(15)、『空の青さを知る人よ』(19)などがある。

 

<アプリ情報>
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ G」配信中!

コンテンツ名:「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズG」
配信プラットフォーム:App Store、Google Play
ジャンル:RPG
アプリダウンロード無料、ゲーム内一部アイテム課金


▼『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』公式サイト
http://www.g-tekketsu.com/
▼『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』公式Twitter
@g_tekketsu / 推奨ハッシュタグ: #g_tekketsu
▼「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズG」公式サイト
https://g-tekketsu.ggame.jp/
▼「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズG」公式Twitter
@g_tekketsu_game

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