インタビューココだけ | 宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-

『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』監督 安田賢司 × シリーズ構成・脚本 福井晴敏 インタビュー [宇宙戦艦ヤマト紀行]

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まもなく劇場上映が開始となる『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』(以下『2205』)は、新キャラクターと新スタッフを迎えて、リメイクシリーズとしても新たな船出となる。引き続き参加する福井晴敏氏と、初めて『ヤマト』シリーズに参加する安田賢司監督に作品の成り立ちと展望を語っていただいた。

あえて『ヤマト』を知らない世代だからこその視点

──まずは本作品に参加されることになった経緯を伺わせてください。

安田これまでのリメイクシリーズは、ヤマト世代でも〈どストライク〉な方々──『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下『2199』)だと出渕裕さん、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下『2202』)だと羽原信義さんが監督をされていましたよね。それこそリアルタイムで『ヤマト』を体験された方ならではの強い愛着と思い入れを持って制作に取り組まれたゆえに、非常に濃密な作品に仕上がっていたと思うんです。今回は物語も新クルーを迎えての新たな船出ということもあり、ヤマトを知らない人間に監督をやってもらいたいと、初めてお話いただいたときに伺いました。『ヤマト』の細かいセオリーや世界観を知らない自分にはさすがに荷が重いかなと思いつつも、そういう理由でのオファーであれば、ゼロからのスタートでも自分なりのチャレンジができるかなと思えたんです。それで「参加させてください」と返事をさせてもらいました。

福井僕は『2202』からの参加でしたので、ぶっちゃけ制作の中盤から続投は決まってはいました。『2202』がああいう決着の仕方をしたので、僕としては正直なところやり切った感はあったんです。ただ、登場人物たちや地球のその後の運命を思うと、なんだかひどい状況で放り出してしまったような気持ちだったんです。あの最終回だけを観たら、微かな希望を感じる終わり方ではあります。でも古代進と森雪を高次元の世界から救うために時間断層を放棄しちゃったから、地球は丸裸で放り出されてしまったような状態なんですよね。周りの宇宙にはいろんな未知の異星人がいるし。地球に戻った古代と雪にとっては居た堪れないに違いないですよね。その辺のところを押さえつつ、ちゃんとリメイク作品としての体裁を整えなければならないことを踏まえると、他の人にはだいぶ荷が重いだろうと思って引き受けた感じですかね。

──安田監督にお声がけされようと思われたのは?

福井今回はサテライトさんが制作をされることになり、安田監督もサテライトさんから紹介していただいたんですけど、その条件のひとつに、先ほど安田監督もおっしゃっていた「ヤマト世代ではない人」というのがあったんです。リメイクものとはいえ昔の『ヤマト』をなぞるのが目的ではないですし、まるっきりなぞるのであれば原作を観るのがベストなんですよ。これは『ガンダム』シリーズに携わってわかったことなんですけど、絵の画調をそろえるためにシーンを描き直してビルドインしたとするじゃないですか。でも絶対に元の作品よりも良くはできないんですよ。元の作画がイマイチだったから、きれいにしたらどんなにいいだろうと思って描き直したとしても、ファンの思い入れ補正に勝つことは決してできない。リメイク作品もそれと同じで、まるっきり繰り返しというのは意味がないんですね。今の時代に合わせた物語に仕立て直していくと、もう普通に新作アニメを作る気構えが必要で、『ヤマト』に対してフラットな視点をもっている安田監督はそういう意味でもベストの人材でしたね。

前2作とはアプローチを変えつつも同じ線路で

──脚本の作業はどのように進められていったのでしょうか?

福井先ほどお話したように『2202』がああいう形で終わり、登場人物たちも地球も生き残ったとはいえ厳しい状況に置かれている。その先の大きな道標としては、原作の『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』で描かれるイベントが待っている。続編として与えられている条件と課題をクリアして、それをひとつの物語として縫い合わせていけば基本の形に仕立てることができたので、悩むということはなかったですね。

安田シナリオに関しては福井さんにお任せしていたので、上がってきたものに対して確認しながら作業を進めていくのが主なところでしたね。自分が考えるオリジナル展開やキャラクターといった変な色気を出すよりも、福井さんのシナリオで出来上がった世界観に寄り添っていく感覚ではありました。

──『2205』はどんなテイストに仕上がっているのでしょうか?

福井リメイクシリーズも3作目になるので、前2作とはアプローチを変えています。ただ、そうはいってもなんとなく原作で印象に残っているものってあるじゃないですか。そこはきちんとポイントで押さえていて、ご覧になっているうちに『新たなる旅立ち』を思い出してもらえる作りにはしています。1作目、2作目と同じ線路の上を間違いなく走っていますし、そこから脱線もしなければ急な下り坂にもならない。ちゃんと〈先〉へと上り詰めていく線路を敷いていく。そういう意識でいましたね。原作の『新たなる旅立ち』から離れていく部分もあるんですけれども、例えば『2202』を観て「全然『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』と違うじゃん」と感じた人が観たら、「思っていたよりも『新たなる旅立ち』だね」と思ってもらえるような塩梅でやっている感じですね。

大河ドラマの視点で『2205』を作る

──本作で新ヤマトクルーとなる若いキャラクターたちが話題となっています。彼らも原作とは異なるアプローチがされていると感じました。土門竜介は原作の時系列では『新たなる旅立ち』の後になるTV『宇宙戦艦ヤマトⅢ』のキャラクターですよね。

福井原作の『新たなる旅立ち』で新ヤマトクルーとなった北野哲や坂本茂が次の『ヤマトよ永遠に』では忽然と消えていて、何も語られないままTVの『ヤマトⅢ』では初めて新人が乗ってきたような装いで土門たちが来るんですよ。旧シリーズでは歴史的なスペクタクルを目指そうとしつつも、今の目から観るとドラマのつながりに難があったように思えます。『2205』ではそこをつなげていくことで、大河作品のような俯瞰した視点を獲得できる手応えを感じています。土門を先行して登場させたのも大河的な視点による判断ですね。この先の流れを見据えながら『2205』を起点にして育っていけるような種蒔きをしていきましょうと話をしてます。新生ヤマト世代のスタッフたちともコンセンサスは取れていて、それに応える感じでキャラクターは配置しています。

安田誰をどこの艦に配置しようか、というところですよね。何しろ今回は3隻もいますから。

──新ヤマトクルーのキャロライン雷電は、それまでの『ヤマト』にはいなかったタイプのキャラクターだと思います。

安田ヤマト世代ではない自分からしたら、地球を救うお話なのに日本人しかいないというのは腑に落ちないところがあって、「なぜなんですか?」と聞くと「そこはそういうものだ」と(笑)。

福井みんなうつむいた感じで「そこは……」と(笑)。

安田そこはわかりました。ただ、いろんなタイプのキャラクターがいたほうがいいかなと思ったんですね。濃いめの女性キャラクターが新クルーに混じっていてもおもしろいんじゃないか、そんな話をしたような気がしますね。

福井原作の『ヤマトⅢ』に登場する雷電(五郎)は巨体の男性キャラなんですよ。今回は薮(助治)を出すことになっていたし、徳川太助もいる。太めキャラ枠に3人はさすがに多い。だから雷電はいらないんじゃないかという話も一度は出たんだけど、「雷電はファンの印象に残っているよ」と、ヤマト世代の玄人さんたちから聞いていたんです。どうしようかと悩んでいたときに、「じゃあ、いっそ女体化したらどうですか?」という驚きのアイデアが出て(笑)。それで原作ファンがたまげるような大変化を遂げたわけです。それに安田監督も言っていた〈地球側に日本人しかいない〉という点については、この先もリメイクシリーズが続いていくとしたらどこかで説明しないといけないなと思ってます。その意味でキャロライン雷電は布石にもなって、ちょうど良かった気がしますね。ちなみに『2202』でも他の人種もいることは匂わせているんです。地球連邦大統領が東洋人にも白人にも見えるデザインになっているのもそういう理由からです。

安田〈ヤマトらしさ〉というところは、大きな要素だったりするんですよね。〈ヤマト〉の名を冠した艦に、日本の姓名をもつキャラクターたちが乗って、宇宙だけど海上にいるような戦い方で活躍する。そこが変わってしまうと別の作品になってしまうので、そのバランスを注意しなきゃいけないとは思いますね。

古代と土門の物語、そしてデスラーの物語が主軸

──安田監督もおっしゃっていたようにメインキャラクターたちも原作とは違った立ち位置になっています。

福井高次元から生還した古代は、常にマスコミに追いかけられるような状況になっているはずです。でもヤマトに乗艦したらみんな事情を知っているし、同じ窯の飯を食った戦友だから庇ってくれるじゃないですか。そこに馴れ合いは生まれてもドラマは生まれないので、古代進にとっていちばんの保護者と言っていい森雪と真田を別の艦に移しちゃえと。今回はヤマトを艦隊で航海させようというアイデアがまずあったので、ちょうどよかった。古代と二人を引き離して、代わりに自分を憎んでいて腹にイチモツある土門と向き合わせることで緊張感が生まれてドラマにもっと弾みがつくようにしようという、そういう狙いでしたね。

──古代進のドラマが主軸でありますが、他に注目してほしいキャラクターは誰でしょうか?

福井やはりダブル主人公とも言えるデスラーでしょうね。古代と土門という地球サイドのドラマがあり、もう一方でデスラーの物語も大きな幹となっています。デスラーは究極の絶望を味わうことになり、そこから人間的にどう這い上がっていくのか? 古代とは生まれも立場も違うけれど、ある意味同じ目線に立つことになる。そのドラマは原作にはなかったものです。コロナ禍にある今の世の中で、みんなこの先どうしたらいいのか? どこを目指して歩いていけばいいのかわからない。その空気をそのまま劇中に取り込んだ配置でしたね。

──安田監督が動かしてみて、面白いと思われたキャラクターは?

安田そこはもちろん土門ということになりますよね。絵コンテを描くにあたり、シリーズを通してのキャラクターたち──デスラー、古代、森雪、真田──は立ち振る舞いが固まっていて、新しい要素を入れる余地はないんです。土門というキャラクターは原作の『ヤマトⅢ』で登場していますが、顔もガラリを変わっていて、新しい役割も担っています。キャラクターデザインの結城信輝さんから初めて土門の設定画稿が上がってきたときには、自分の手で育てられるキャラクターが生まれたのを感じましたね。重要な役割とともに変化もあるので、そこをちゃんと観せていけたらといいなと思ってます。

原作を彷彿とさせる音楽のタイミング

──音楽の面ではどんな工夫をされているのでしょうか?

福井音楽も映像と並んで強烈に記憶に残っていると思うので、鳴らしどころは原作を完コピしています。原作から離れている部分もありながら、なんとなく『新たなる旅立ち』に仕立てられているなと思えるのは、音楽によるところが本当に大きいですね。

安田『ヤマト』シリーズ自体が他のタイトルとは違って、曲自体に存在感があるんですよね。だからこそ絵柄、キャラクター、メカだけじゃなくて主題歌や劇中の音楽も皆さんの中に強く残っている。音楽を変えてしまうと『ヤマト』ではなくなってしまう。逆に言うと、音楽が鳴った瞬間に『ヤマト』であることが再確認できるということでもあるんです。『2205』は絵柄も物語も新しくなりますけど、『ヤマト』であるという確固たるものが音楽で担保されている点が非常に大きいのかなと思いますね。

今の世の中だからこそ『2205』を観てほしい

──最後にこれから『2205』をご覧になるファンへメッセージをお願いします。

安田『2205』は完全なリメイクではなく、新しいキャラクターがたくさん出てきて、彼らと古代たちには新しい展開が待ち受けています。そういった意味で本当の〈新たなる旅立ち〉がこれから始まっていくと思います。皆さんの予想の斜め上をいくような、いい意味で裏切っていく展開がたくさん待っていますので、思い出とともに劇場で楽しんでいただければと思います。

福井冒頭にちょっと長めのあらすじを付けていますので、最低限のことを理解してもらってから『2205』を観られるようになっています。『ヤマト』って聞くと、なんか古色蒼然としているなと考えちゃう若い世代もいるだろうし、もうとっくに卒業した人もいると思うんです。でも、コロナ禍になってもう2年が経って、アフガニスタンが大変な状況になって、積み上げてきたものが次から次へと突き崩されていく。今の世の中に対してわれわれ人間がどう向き合っていったら幸せになれるだろうか? 『2205』はそういうお話を真摯に描いているアニメーション作品になっています。食わず嫌いで終わらず、だまされたと思って観にきていただけると嬉しいですね。よろしくお願いいたします。

PROFILE

安田賢司(やすだ・けんじ)
1972年8月17日生まれ、栃木県出身。サテライト所属。演出を経て『ドッとKONIちゃん』で初監督。『しゅごキャラ!』『アラタカンガタリ 〜革神語〜』『創勢のアクエリオンEVOL』『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』などの作品を手掛ける。

PROFILE

福井晴敏(ふくい・はるとし)
1968年11月15日、東京都生まれ。小説家・脚本家。1998年に『Twelve Y.O.』でデビュー。同作で第44回江戸川乱歩賞を受賞。翌年発表した『亡国のイージス』は、2005年に映画化され、氏の代表作となった。『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』では、小説執筆に始まりメディアミックス、スピンオフ作品の原作を担当。続く『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』ほか、現在のガンダムシリーズにおける中心的役割を担う人物のひとりである。また作家としてだけでなくプロデューサー的な領域においても活躍。本年公開の映画『空母いぶき』では企画のひとりとして参加した。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』ではシリーズ構成と、岡秀樹氏と共作で全話の脚本を務めている。

シリーズ最新作
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