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『OBSOLETE』虚淵 玄(原案・シリーズ構成)×髙橋良輔(企画プロデュース)スペシャル対談全文掲載

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YouTube Originals バンダイナムコアーツチャンネルにてEP1~EP6の配信が開始されるとEP1が瞬く間に770万再生を突破するなど、全世界で大反響を呼んでいる奇才・虚淵 玄(ニトロプラス)が手掛けた完全オリジナルフルCGアニメーション『OBSOLETE』。全高2.5mのリアルロボットならではの魅力について、虚淵 玄とベテラン監督・髙橋良輔にアニメ評論家・藤津亮太が聞いた。

11分の尺はすごく正しいロボットアニメの作り方

──今回、髙橋さんのクレジットは企画プロデュースとなっています。

髙橋 そういう肩書がついていますが、やったことは応援団ですね(笑)。

虚淵 (笑)

髙橋 今回は企画の相談を受けたので、それがうまくいくように応援するという役回りだったんです。なので企画の立ち上がりのところで、虚淵さんも交えて、いろいろ打ち合わせに参加をしました。途中からは自分の企画がスタートしたので、そちらに専念することになったのですが。

虚淵 この『OBSOLETE』は、わりと無茶な冒険をしようとしていた企画だったので、髙橋監督に応援いただいて、とても助かりました。あと僕としては『OBSOLETE』を筆頭に、『装甲騎兵ボトムズ』(髙橋良輔監督)には大きな影響を受けているので、当時どんなことを考えていたのかというお話を聞いて、参考になるところは参考にしたいとも思っていました。だから最初のご挨拶のタイミングで、渋滞に巻き込まれて遅刻しちゃったことを未だに悔やんでいます(笑)。30分くらい、髙橋さんのお話を聞き逃してしまったんです。

髙橋 そんなこともありましたね(笑)。虚淵さんはこの企画ではじめてお目にかかりましたけれど、パワフルな方なんですよ。パワフルで、しかも作品を背負えるだけの自分の色を持っている方というのは、僕は初めてお会いしました。

──『OBSOLETE』という企画の第一印象はどうでしたか?

髙橋 エグゾフレームが、要はカラシニコフである、という発想がおもしろかったです。何か作品を作る時は、真珠の養殖のように、中心なる核のようなものを見つける必要があるんです。今回はそこに、紛争地域をはじめ世界で最も使われている自動小銃のカラシニコフを入れている。「そこにそれを選ぶのか」というアイデアで、これは、ものを作る人の発想だなと思いました。

虚淵 二足歩行ロボットって、リアリズムで考えるとかなり無茶があります。でも逆にいうと、その無茶を成立させるためのアイデアは、作品を構成していく大きなとっかかりだし、世界観のアピールポイントになると思うんです。あと一方に、僕としては『ボトムズ』に登場したスコープドッグのように、サビだらけで街の片隅に打ち捨てられているロボットという表現を、改めてもう一度できないかという考えもあって。そこで「安価である」ということを切り口にして、ロボットものの企画を仕掛けてみたら、そこにチャレンジできるんじゃないかと考えたんです。

──やはり『ボトムズ』のインパクトは大きかったのですね。

虚淵 大きかったですね。まず登場するアーマードトルーパー(以下AT)のサイズが4mと画期的に小さい。そこまで小さいと人間と同じフレームに収まるわけで、「そこからこんなにいろんな展開が生まれるんだ」という驚きがありました。例えば、追い詰められたパイロットがコクピットを開けて拳銃で直接、相手のスコープを撃ち抜いて逆転するとか。ああいう発想に本当に痺れました。だから自分も一度は挑戦してみようと思ったんです。
髙橋 日本のアニメにおけるロボットのスタンダードというのは、今はやっぱりガンダムだと思うんですよ。それに対して『ボトムズ』のATは、本流から枝分かれした進化の行き止まりみたいな存在なんだと思ってます。でも、そういうものだからこそ、愛おしいと思ってくれる人もいるんだろうなと(笑)。
虚淵 僕はむしろ、行き止まりと思われているその先を誰もまだ試していないんじゃないかと思っているんです。突破口はきっとあるはずだと、『OBSOLETE』を企画したところはあります。

髙橋 『OBSOLETE』に出てくるエグゾフレームの素体は2.5mぐらいですよね。僕は『太陽の牙ダグラム』の時に、メインメカであるダグラムをおよそ10m程度にしてみたんです。ガンダムが18mですからその半分です。でも演出のほうからは「見せ方でいうなら10mも50mもそう変わらない」という意見があって。それでどこまで小さくできるかを考えたんです。2mまで小さくするとパワードスーツになってしまって、操縦ではなく「着る」ことになってしまう。操縦できるギリギリのサイズはどれぐらいかを考えていって、4mがギリギリのサイズだろうということで、ATの大きさを決めたんです。

虚淵 着るではなく操縦を選んだことがポイントですね。エグゾフレームのデザインは石渡マコトさんですけれど、やはり操縦するメカというコンセプトを生かしつつ、とてもうまくデザインを作ってくれました。打ち合わせでは「4m以下にできるといいね」という話はしていたんですが、見事に2.5mに収まっていて。しかもガワを変えることでいろいろ違うメカになることができるというアイデアもちゃんとクリアをしてくれました。

髙橋 第1話「OUTCAST」で、主人公たちの交戦相手のエグゾフレーム(ALFEX-16-SOP オバンボ)が立ち上がるでしょう。あのフル装備の歩兵のシルエットをしたやつは、すごくいいなぁと思いましたね。

──そのほかにビジュアル的に印象に残ったシーンはありますか。

髙橋 そうですね。ビジュアル的に僕が好きだったのは、ヘリコプターとの戦い(第5話「SOLDIER BRAT」)ですね。あと雪山での戦闘(第3話「MIYAJIMA REI」)は、自分も『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』でやったので興味深かったです。『ペールゼン・ファイルズ』のATは、雪を掘ってトレンチ(塹壕)にしてその中に入っちゃうということをやりましたね。ロボットの弱みって、銃撃戦をする以上、結局高さになると思うので、ならばトレンチだろうと。

虚淵 『ペールゼン・ファイルズ』では足についた装備を使って、雪を掘って潜っちゃうんですよね。髙橋監督の『ボトムズ』シリーズは、ああいう新しいアイデアが必ずあることで、毎回痺れさせてくれるんです。

髙橋 ただスキーを履いてる『OBSOLETE』は、『ペールゼン・ファイルズ』よりもスピード感はものすごくありましたね。

虚淵 普通、アクションシーンは演出家のほうにおまかせして、脚本でこと細かに書くことはしないんです。でも『OBSOLETE』に限っては「こういう意図でこのシチュエーションを作ったので、こういうふうにしたい」という相談をかなり密にしました。例えば「ロボットが走り回っている中で、レーザー砲を撃つのがどれだけ大変なのか」を見せたい、とかですね。しかもそのレーザーのバッテリーがコンテナ1個分のサイズぐらいあったりする。そういうロボットにつきまとう、ある種のバカバカしさみたいなものを入れていきたいと思ったんです。ほかにも「“ビームサーベルっぽいもの”を持たせたいけれど、何ならそれっぽく見えるだろうか」とかいろいろ考えました。なので最終的には、僕の「こんなロボットアクションがみたい」という希望詰め合わせみたいな(笑)、不思議な脚本になりましたね。

──『OBSOLETE』は、各話11分の作品をYouTubeで配信するという独特のスタイルでリリースされています。

虚淵 まず尺についてですが、個人的に、尺の長さがロボット映像の足を引っ張っている部分があると、ずっと考えていたんです。ロボットアクションの見せ場を見せるということから考えると、1話20分で全13話というフォーマットは長すぎるんじゃないかと。今回は、深夜のショートアニメ枠で何かできないかというところから企画がスタートしたこともあり、ロボットアクションの見せ場ありきで、ドラマはその合間合間にチラチラのぞくぐらいでいいじゃないかと考えたんです。

髙橋 ああ、虚淵さんから尺についての考えを聞いたのは今が初めてですが、おっしゃってることはよくわかります。TVアニメを21分で作っていると、“何かで埋めなくてはいけない何分間か”というのが結構出てくるんですよ。でも、そこにはめ込む以上、意味のあるものにしなくてはならない。そこに難しさがあって。だから『OBSOLETE』はロボットアニメの作り方としてはすごく正しいなと思いました。もし僕が今後、短い尺の連作を作るようなことがあったら、それは『OBSOLETE』を真似したんだと思ってください(笑)。

虚淵 (笑)。そういう狙いでスタートしたものですから、各話ごとにいろいろな世界観を提示するのが第一で、ドラマについては何かゴールを設定しているわけではありません。『OBSOLETE』という映像をきっかけに、このエグゾフレームで変わりつつある世界のことを知ってもらい、そこで、みんなで遊んでもらえたらと思っているんです。その土台づくりのための作品なので。

髙橋 今回、各話の間と間に時間や空間の飛躍があるでしょう。それは、作品の力になりますね。僕が『ボトムズ』を作った時は、1クールごとに脈絡なくバンとお話を断ち切って、それで次の舞台に移っていくというのをやったんです。あの飛躍に想像の余地が生まれて、作品の力になっていたと思います。『OBSOLETE』でも、各話の間が飛躍して想像の余地がある状態であることに加え、通じてエグゾフレームのアクションのステージがこれだけあるんだって提示しているわけで、これを見たお客さんの脳内にはいろいろ想像が生まれていくと思います。ドラマというのはキャラクターを一定の方向に導いていくものなので、そういう自由な妄想との相性はあまりよくないんです。ドラマを最小限にして、世界観とアクションをまず見せていくという、この自由さがよいですね。

虚淵 シリーズの続きや、今回映像に映し出されなかったところも、好きに妄想してくださいという姿勢ですからね。

──YouTube配信についてはどうでしょうか? YouTubeのおかげで海外でもだいぶ反響があったそうですね。

虚淵 あの反響はちょっとびっくりしました(笑)。正直想像外でした。日本のアニメの文脈みたいなのを抜きにして観れる映像になっていたのも、ある意味よかったのかもしれないです。僕は、「日本人だからといって、いつも日本人が主人公のアニメを作らなくてもいいんじゃないの」とは、ずっと思っているんです。今回はアメリカ海兵隊を中心にした群像劇というのもあって、なるべく国籍感は出さない方向で考えてはいたんですけど、それがいい方向に働いたかなって感じています。

髙橋 そもそも、日本のアニメっていうのは釣り堀商売のようなところがあるんです。ファンという魚がいるところに釣り糸を垂れているという。日本のアニメ業界はそういうことをちょっと長くやりすぎたのかもしれない。釣り堀は行けば必ず釣れるんですけれど、そこにいるのはせいぜいがフナなんです。そこではマグロは絶対に釣れない。これからは、何が釣れるかわからないところに、釣り糸を垂れていくという冒険が必要な時代になるでしょう。そこではYouTubeをはじめとするネットは、そのための大きな道具になるんだと思います。『OBSOLETE』はそこにうまくハマったんじゃないでしょうか。

PROFILE

藤津亮太(ふじつりょうた)
1968年生まれ。アニメ評論家。著書は「『アニメ評論家』宣言」「チャンネルはいつもアニメ」など。

PROFILE

髙橋良輔(たかはしりょうすけ)
アニメーション監督。虫プロ時代から演出や脚本、原画までこなし、代表作は原作・監督を務めた『太陽の牙ダグラム』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』など。

PROFILE

虚淵 玄(うろぶちげん)
脚本家・小説家。アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』や、特撮『仮面ライダー鎧武/ ガイム』など、話題作の脚本を手がけてきたヒットメーカー。


▼OBSOLETE(オブソリート) 公式HP
project-obsolete.com
▼OBSOLETE(オブソリート) 公式Twitter
@obsolete_anime

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