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かわぐちかいじ原作、初の実写映画化!『空母いぶき』浅野秀二(VFXプロデューサー)インタビュー

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大ヒット作『沈黙の艦隊』や『ジパング』で知られる巨匠・かわぐちかいじの同名漫画『空母いぶき』が、西島秀俊、佐々木蔵之介らオールスターキャストで待望の実写映画化! 2019年5月24日(金)より大ヒット公開中! そこで今回は、これまで数々の映画制作に携わり、本作ではVFXプロデューサーとしてクレジットされているCG制作のスペシャリスト、浅野秀二さんにインタビュー。本作での役割や参加することになった経緯、VFX制作の苦労ややりがいなど様々な話を伺った。

当時まだコミックスが3巻ぐらいまでしか出ていなかったんですけど、
原作の連載も見つつ「どこまでやるんだろう?」という気持ちがまずありました

──浅野さんはVFXプロデューサーとクレジットされていますが、本作ではどのような役割を担っているのですか?

浅野どんな作品でもそうですけど、プロデューサーなので、基本的にまずは頂いた作業内容に即してどういう体制で制作に臨むか、ということを予算のことも含め考えて、最初にスタッフィングをします。そしてディレクターなりクリエイターを揃えたところで、具体的に脚本のイメージをどういう風に作っていくか作戦を練って、最終的にはそれを形にしていきます。『空母いぶき』のような作品は、先にイメージを出さないとどうにも前に進みませんから、僕らが最初にやったのは、とにかく画コンテをどんどん描いていくことでした。

──数々の作品にVFXプロデューサーとして携わってこられた浅野さんですが、本作にはどのような経緯で参加されたのですか?

浅野本作のプロデューサーである小滝(祥平)さんに声を掛けて頂きました。小滝さんとは8年前に『聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-』(以下『山本五十六』)をやらせて頂いて、その作品も膨大な量のCGだったんですけど(笑)。今回のプロット的なものが上がってきたのは3年くらい前ですかね。当時まだコミックスが3巻ぐらいまでしか出ていなかったんですけど、原作の連載も見つつ「どこまでやるんだろう?」という気持ちがまずありました。原作を読むと色んなシチュエーションが出てくるので、「これは前作『山本五十六』の比じゃないな…」というようなことを何となく思っていました。そういう意味ではとてもドキドキしましたね(笑)。

戦闘シーンなどのケレン味のあるところは、
もちろん要素としては最も大きいんですけど、
ただやっぱり何でもないところをそれっぽく見せるっていうのも
ビジュアルエフェクトにとってはすごく大事な役割なんです

──実写映画化が難しい原作だと思いますが、制作に臨む前はどのようなお気持ちでしたか?

浅野秋津(竜太)艦長のセリフではないですけど、これは「高いハードル」だな、と思いましたよね(笑)。物凄く高い壁を感じましたし、これを超えなければいけないのか、ということを思いました。

──本作の中で、VFXやCGは具体的にどのような部分に使われているのですか?

浅野細かく言えば映画の全カットのうち、恐らく1/3は何らかのVFXが施されているんです。でも、それらはほとんど気付かないところだと思います。例えば、甲板上は艦橋の一部を除いてほとんどがCGで、誰も船の上では演技していません。また、細かいところだと首相官邸のレースカーテン越しに見えている風景とかですね。ごく自然に見えるんですけど、実は全く違う風景のものを差し替えているんです。でも、さりげないところほど自然に見えないと、観客の皆さんもなかなかストーリーに没頭できなくなってしまうんですよね。本来ビジュアルエフェクトというのはテリトリーが広いんです。戦闘シーンなどのケレン味のあるところは、もちろん要素としては最も大きいんですけど、ただやっぱり何でもないところをそれっぽく見せるっていうのもビジュアルエフェクトにとってはすごく大事な役割なんです。意外にわかりきった戦闘表現よりも、そういう日常の風景とかで少しでもしくじってしまうと、観ている方たちが引いてしまう。『空母いぶき』は緊張感のある話なので、なるべくそういうミスがないように非常に気を遣いました。まぁ、その部分は結局誰も気付かないんですけどね。とは言え、気付かれないことが成功という、とても皮肉な作業なんです(笑)。

意外かもしれませんが、もっと時間が掛かったのは
戦闘機に乗るパイロットの“ヘッドアップディスプレイ”なんです

──全部でどのくらいの人数が本作のVFX制作に関わられているのですか?

浅野社内のデジタルスタッフは総動員していますし、かつ、ある種専門的な部分の表現とかは外のスタッフの方にも協力して頂いているので、恐らく100人ぐらいは関わっているんじゃないかなと思いますね。手を動かすスタッフもいますし、プロデューサー的な方もいるんですけど、関わった人は大体それくらいかなと思います。

──一つのシーンを作成するのに、長い時ではどれくらいの時間を要するものなのですか?

浅野今回ビジュアルエフェクトが施されているのは総カット数で大体500カットぐらいなんですよ。それらを一つ一つ片付けていくというよりも、ある一つのシーンやカットができて、イメージができて、監督のチェックを受けて、そこで出る修正点を直していく。それの繰り返しがどこまで続くかによって要する時間が決まります。一発OKもあるんですけど、例えば、本田(翼)さんが演じる(本多)裕子が炎上する護衛艦《はつゆき》を見上げるカットは撮影時からかなりイメージはできていたので、あっさり終わるのかと思いきや、やっぱり見せていくと、「煙が濃すぎる」とか「炎をもっと足したい」、で実際足してみると「いや、やっぱり要らない」っていうのが延々と続くんです(笑)。とは言え、他のシーンも同時進行でやらなきゃいけなかったりするので、結局気が付くとその1カットに3ヵ月ぐらい掛かっていましたね。あと、意外かもしれませんが、もっと時間が掛かったのは戦闘機に乗るパイロットのディスプレイなんです。“ヘッドアップディスプレイ”って言う、ヘルメットの中に映っている画面のことです。そのデザインがなかなか決まらなくて、4ヵ月くらい掛かったと思います。最後の方はちょっとした色味でも「この緑はないだろう」とか「いやいや、それで良いんじゃないのか」とか言いながら、「もっと明るく」「もっと暗く」を延々と(笑)。キャメラマンはじめスタッフの皆さんはやっぱり拘りが強く、最終決着がつくまでかなり時間が掛かりましたね。しかも、今回登場する戦闘機は「F-35」がモデルなんですけど、本物のヘッドアップディスプレイは本当に限られた人しか見たことがない機密情報なので、私たちが参考にできるものは、アメリカ海軍(Navy)が広報用に出している映像くらいなんです。今回の制作にあたって自衛隊の百里基地なども見学させてもらいましたが、集められる情報を踏まえて現実にあるものをベースにしながら、最終的には想像で決めるしかないんです。

役者さんの演技に応えるようなビジュアルを用意しないと、
この映画は完成しないんだなって。だから、やりがいと言うよりは、
やらなきゃいけないという義務感みたいなものですかね

──浅野さんが本作の中で映像表現において挑戦されたことはありますか?

浅野戦闘中に隊員たちが「マスカー開始!」と言うシーンがあるんです。マスカーというのは、大量の泡を噴射させることでその泡で魚雷とかの探知を撹乱させる装置で、目的はわかっているんですけど、実際ビジュアル的にどうなるのかがわからない。海底から見て、ブワーって泡っぽいものが出ているというのは短いながらに表現しましたが、本当にこれで正解なのかどうかっていうのは自衛隊の人も含めて誰もわからないはずなんです。なぜなら、マスカー中に海中からそれを見ることはないので(笑)。だから、海中の表現は本当はどれもこれも誰も見たことはないんですよね。同じように、魚雷同士が当たって爆発するとどういう風になるのかっていうのもわからないんですよ。なので、当然ながら過去の潜水艦映画を参考にしました。『空母いぶき』の設定は近未来のフィクションにはなっているものの、全て架空ではなくて現実にあるものを描いているから、表現も嘘っぽくはできないんです。とは言え、映画なので、映像でわからせなきゃいけない。表現上の要素のバランスが難しかったですね。そういう意味では、艦同士の距離感の表現も難しかったですね。第5護衛隊群と対峙している敵艦隊は、実際はレーダーでしか認識できないほど離れたところにいるわけですよ。だけど、緊迫感を出さなきゃいけない。その演出をやり過ぎると、今度は観る人たちが「それは嘘でしょ」って感じてしまうんです。とは言え、ある程度は嘘の表現をしないとエンターテインメントにならない。時々描写される《いぶき》CIC(戦闘指揮所)のレーダー画面は戦闘の状況説明と緊迫感を表すのに凄く有効だったと思います。

──苦労の多いVFX制作ですが、そんな苦渋を味わってでもやろうと思える“やりがい”は何ですか?

浅野基本的にはVFXの作業に入る前に、役者さんたちの演技は撮り終えているんです。編集ラッシュ(CG作業前の仮編集版)のような形になって作品を通して見ると、そこにCGはなくとも、演者さんたちの熱演があるわけですよ。「衝撃に備え!」みたいな台詞の後に、爆発シーンがあると、その爆発カットが黒味になっていて「CG」とだけ書かれている。これを埋めなきゃいけないんだな…って(笑)。その黒味の前後で役者さんがリアルな演技をされていますからね。ああいう熱演を見ると、ここの演技を台無しにするような画は作れないよなといつも思うんです。この演技に応えるようなビジュアルを用意しないと、この映画は完成しないんだなって。だから、やりがいと言うよりは、やらなきゃいけないという義務感みたいなものですかね。役者さんの熱演を壊さず、むしろこの演技に説得力を持たせるビジュアルを用意しないといけないという意欲にどうしても駆られるんです。

海上でのイチ押しシーンは、
やっぱり冒頭の第5護衛隊群が登場してくるオープニングタイトル。
あの一連の映像は格好良いなと思いますし、
個人的にも上手くいったかなと思っています

──VFX的に「このシーンは必見です!」というイチ押しシーンを教えてください。

浅野この作品の戦闘描写は大きく3つに分けられるんです。一つは海上。その次に潜水艦が潜む海中。最後は戦闘機のバトルが展開する空中。この3つは同じCGではあるんですけど、その作り方のアプローチは全く変わってくるんです。海上でのイチ押しシーンは、やっぱり冒頭の第5護衛隊群が登場してくるオープニングタイトル。あの一連の映像は格好良いなと思いますし、個人的にも上手くいったかなと思っています。一方の海中ですが、海中の表現は簡単そうに見えてとても難しいんです。基本的に太平洋の真ん中で潜水艦が対峙しているので、周りには岩も海底も何にもない世界です。その中で海中を表現するためには、泡とマリンスノーぐらいの要素しかなくて、ライティングといっても深海なのでそんなに明るくもできない。果たして暗い空間にポカンと浮かんでいる潜水艦だけで画が持つのだろうかっていう心配がありましたね。でも結果として、髙嶋(政宏)さん演じる滝(隆信)艦長の潜水艦《はやしお》と東亜連邦の潜水艦が対峙した時に、どっちが撃つかっていう緊張感を映像でも上手く表現できました。空中戦では、柿沼と迫水チームのバトルの展開が凄く格好良くできていると思っています。あんなすれ違ったりすることは近代戦ではあり得ないとは思うんですけど、ただ戦闘機が好きな人はああいうのを観たいんじゃないかと思うんですよね。戦闘機のバトル表現っていうのはこうじゃなきゃダメだろうと割り切って描きました。エンターテインメント的な表現としてはかなり見応えのあるシーンになったかなと思っています。

──最後に、すでにご覧になった方、これからご覧になる方へ一言メッセージをお願いします。

浅野戦争映画というものは数多くありますが、この映画『空母いぶき』は恐らく日本映画で初めて、海上警備という日本特有の一つのミッションを正面から描いた作品です。現実に外国の漁船が不法に侵入したニュースなどが、ちょくちょく取り沙汰されていますけど、私も含めて一般の人たちはあまりその警備行動とは実際にどういうことなのかってわからないと思うんですよね。この映画は初めて、そんな自衛隊をはじめとする国を守っている人たちが抱えているジレンマを具体的に描いていると思います。国が決めた防衛活動の取り決めの中で彼らがその最前線で常に厳しい判断をしていかなきゃいけないという状況とか、その決断をするまでの、色んな意見や感情がその現場の中でもやっぱりあるんだっていうことがわかると思うんですよね。だから、アクション映画として楽しんでもらいつつ、日本の防衛活動の有りようを知ってもらえたら良いかなとも思います。

PROFILE

浅野秀二(あさのしゅうじ)
株式会社IMAGICA Lab. VFXプロデューサー/スーパーバイザー。1959年8月30日生まれ、新潟県出身。立教大学卒業後、1983年に国内ではまだ希少な存在だったCG制作会社トーヨーリンクス(現イマジカCS部)に入社し、CG制作に携わるようになる。主な作品に『聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実』(2011年/成島 出監督)、『柘榴坂の仇討』(2014年/若松節朗監督)、『クリーピー 偽りの隣人』(2016年/黒沢 清監督)、『花戦さ』(2017年/篠原哲雄監督)、『空飛ぶタイヤ』(2018年/本木克英監督)などがある。

 


公開情報
空母いぶき
2019年5月24日(金)より大ヒット公開中!

 

配信情報
ボイスドラマ『第5護衛隊群かく戦えり-女子部-(映画「空母いぶき」より)』全三章
映画『空母いぶき』公式サイト特設ページにて配信中!

空母いぶき 映画公式サイト

映画『空母いぶき』特集サイト“V”的極秘ファイル

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