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大ヒット映画が豪華特典満載のBlu-ray&DVDで登場!『機動戦士ガンダムNT』吉沢俊一×福井晴敏スペシャル対談

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累計出荷数180万本を記録した大ヒット作『機動戦士ガンダムUC』のその後を描く、“宇宙世紀”シリーズ最新作『機動戦士ガンダムNT』。大ヒット&ロングラン上映の要因となったのは? 吉沢俊一監督と脚本の福井晴敏さんに話を伺った。

世代を問わず受け入れられた『ガンダムNT』

──本作は『機動戦士ガンダムUC』(以下『ガンダムUC』)の続編となり、複雑な勢力図など新規のファンにはハードルが高い部分もあったかと思います。それでも一本の映画として幅広いファンに受け入れられたのにはどんな要因があったかと思われますか?

福井この作品は『ガンダムUC』を見たお客さんがその先の世界を覗きながら、ニュータイプについてひとつの答えを受け取る作品にしようというのが企画の発端でした。なので『ガンダムUC』を見たお客さんが前提だったんです。間違って『ガンダムUC』を知らない方が見たら、意味がわからないだろうなとは正直思いながら作っていました。それが意外にも知らない方が見ても、『ガンダムUC』よりもわかりやすくて、宇宙世紀の世界に入りやすかったというご意見があって、それは結果論ではあるんですけれどもありがたいなと思いました。

吉沢他のスタジオの知り合いからも比較的好評でしたし、忘年会で久しぶりにあった仕事仲間からも反応がよかったですね。

──劇場に見にきていたファンの年齢も幅が広かったように思います。

福井それは、どこの量販店に行っても必ずガンプラのコーナーが置かれているということがやはり大きいですよ。日本に住んでいれば、目の端に入る場所に必ずガンダムがある。これは大変なことですよね。

映画という形態だからこそニュータイプをテーマに

──先ほど福井さんが言われたように『機動戦士ガンダムNT』(以下『ガンダムNT』)は、富野由悠季監督作品以外でニュータイプについて深く切り込んだ作品のひとつともいえます。ニュータイプというテーマに真正面から取り組まれたのはどのような意図からでしょうか。

福井『ガンダムUC』でニュータイプを深く掘り下げてしまったので、一度その本質をしっかり見せておかないと、先に進みようがないだろうなという感触はありました。

──episode 7の最終決戦でバナージとフル・フロンタルは時間や空間まで飛び越えていく表現になっていました。

福井たとえば『ガンダムUC』以降の世界を舞台にしたロングシリーズで、ニュータイプをメインテーマに据えたとします。“人類の進化”という普遍的な題材とはいえ、現実にはない設定をずっと語っていくのはエンタテインメントとして重たいですよね。でも今回のように単発で、人の生き死にを託して見せるということだったら、できるんじゃないかと。90分という尺と映画という公開形態だからこそ成立し得たのかもしれませんね。

──ニュータイプをメインテーマにしたからタイトルに「NT」とつけたのでしょうか?

福井『ガンダムUC』に連なる次回作は、アニメが完結した直後から話はありました。韻を踏んでガンダム+アルファベット2文字で考えると、「UC」は「ユニバーサルセンチュリー」にかけていたので、次に象徴的な2文字となると「NT(ニュータイプ)」くらいでしょう。ただ「NT」をそのまま「ニュータイプ」と読ませたら芸がないので、「UC」を「ユニコーン」と読ませたようにダブルミーニングにはしたい。そこで奥さんに、「NT」と略せてカッコよさそうな言葉をピックアップしてもらったんです。今から4年くらい前ですね。ただ他の仕事もあったので、名前の件はいったん保留にしておいたんです。そのあと外伝的小説の『不死鳥狩り』を足場にして企画が動くことになって、改めてピックアップ・リストを見たら「ナラティブ」の一択でした。「ナラティブ(narrative)」は「物語」「語り直す/編纂する」という意味で、ダブルミーニングとしてもおもしろいし、「ガンダム」の後に続く語感としても悪くない。

──アルファベットの「NT」が先行して決まっていたのが「ナラティブ」と結びついて、ニュータイプをテーマにした本作を象徴するタイトルになっていると思います。

吉沢「ナラティブ」は最初に聞いたときからスッとなじんでくる響きでしたね。カッコいいと思いました。

ガンダムはオカルトだけどオカルトじゃない!?

──吉沢監督の中でニュータイプを描くことの難しさはあったのでしょうか?

吉沢自分もガンダムシリーズを見て育ってきた世代なのでニュータイプのイメージは蓄積されていて、相応に理解はあったんですよ。福井さんから脚本をいただく前に、『不死鳥狩り』を読ませてもらっていて、本当にきれいな話だなというのが最初の印象だったんです。あとは福井さんの脚本を映像にしていくうえで、『不死鳥狩り』で最初に感じた“きれい”という印象をどう絵に反映していくか、という思考にすぐスイッチが入ったんです。

福井シナリオの打ち合わせで、富野監督のガンダム作品をたどりながらニュータイプについての僕の見解を細かに話したことがありましたよね。

吉沢はい。

福井それを聞いての吉沢監督の感想が「そんなオカルトの話だったんですか!」だったんです(笑)。

吉沢そうですね(笑)。

福井でもね、そうなんですよ。ガンダムって。だってアムロやカミーユは死んだ人と話をしているわけですからね。少年漫画でもよく死んだ仲間が語りかけてきて、主人公がパワーアップして勝利するパターンがありますよね。ニュータイプもそのノリだろうと受け止められがちですが、富野監督作品の場合は単純なオカルトではなくて演出に筋道があるんですよ。富野監督の演出にはすべてに法則性が考えられていて、それをつぶさに観察していくと、ニュータイプが別の何かに憑依されて語っているとわかるようなセリフになっていて、憑依したものが離れるとそういう演出がちゃんとされているんですよね。

──『機動戦士ガンダムZZ』のジュドーは普段は活発な年相応の少年でしたが、ハマーンとの対決では達観したセリフになっていました。

福井もし現実の世界で人口爆発が進んでいくと仮定した場合、人がどういう社会を構成していくのか? それはおそらく宇宙世紀の世界から大きく外れていないんじゃないか。誰もが考えるところからは大きく外れない未来が、宇宙世紀なんだろうと。富野監督がもっている、人間や社会に対する観察眼の鋭さが、ガンダムを生きながらえさせている最大の理由とも思うんです。そのリアリティーの裏側をペロッとめくると、富野由悠季という男から発した死生観が張り付いている。それがガンダム世界の根本の柱であり、二重構造になっている点がおもしろいと思いますね。

──富野監督のガンダムでは、現実と地続きの世界観と、富野監督の死生観に基づいた人類の進化=ニュータイプが二重構造になって描かれていると。

福井その二重構造から離れると、ガンダムは容易にミリタリーものになってしまう。それはジャンルとして確立して需要もあることだし否定するものではないんですけれども、ガンダムが本来、内包しているおもしさとはちょっと別のところにあるんじゃないか。それは『ガンダムUC』のときから意識していたことでもあり、そういう意味では『ガンダムNT』で棚卸しをしたとも言えます。

──宇宙世紀の歴史やニュータイプをいったん棚から下ろして、改めて調べて吟味したうえで、次代に備えた作品ということでしょうか。

コアのドラマは普遍的な部分から離れない

──『ガンダムNT』は先ほどもあったようにニュータイプという壮大なテーマを描いてはいますが、ヨナ、リタ、ミシェル3人の物語が主軸になっていたと思います。

福井そうですね。ストーリーのコアはミニマムな話ですよね。設定や世界観を広げてみても、“誰が何をするか”という一点にお客さんは最も惹かれる。ガンダムを手がけるときは、コアのドラマは普遍的なところから離れないように特に心がけていますね。

吉沢ニュータイプの解釈論も作品の引きになりますが、ドラマがすばらしいので絵になるんですよ。なかでも印象深いのが、3人で浜辺に並んでいるシーン。パッとしない天気ながら厚い雲が太陽の光でグラデーションになっている。脚本を読んでいると、そんな情景が浮かぶんです。

福井脚本でつぶさに書いてはいなかったけれども、脱走してきた3人がコロニー落としで変わり果てた故郷に立っていたとしたら、あの情景しか想像のしようがないだろうなとは思います。それは三途の川のイメージでもあって、日本人が共有しているものなんですかね。

吉沢かも知れないですね。どこか暗くて、あの世みたいな感じがするというか。3人がともに100%いい子じゃなかったりもしますし、辿ってきた凄惨な経験が3人に影を落としていることを踏まえていれば、イメージ作りに苦労することはあまりなかったですね。『ガンダムNT』が幅広い年齢層に支持されたのは、あの3人のドラマによるところが大きいのかも知れませんね。

バナージが出ても3人のドラマが霞むことはない

──後半で、バナージがヨナを助けたあと、2人は邂逅を果たしています。短いけれども印象に残るシーンでした。

福井バナージはちょっと出てきて話をしただけでも印象が焼き付いてしまうキャラクターだから、せっかく最後まで積み上げた3人のドラマを破壊するようなことがないように、そこは最大級に気をつけたところですね。バナージが出てくる手前まで脚本を書き進めたところで、3人が霞むことはないと自分で確信がもてたから、バナージを出す決心がついた感じです。実を言えば始終、顔を見せない選択もあったんです。でもさすがにファンは見たいだろうから、横顔とかバイザー越しに正面顔が見えるくらいにとどめました。

吉沢バナージのシルヴァ・バレトがビーム・マグナムを撃つのは一発だけなんです。一発だけだから印象に残るんですよ。バナージはその一発だけで存在感を残して去りつつ、でもちゃんと3人の物語として幕引きになっている。まったくジャミングになっていない。それが少ないセリフで自然にできていて、すごくいい立ち回りをやっていただいたと思いました。

福井最後にバナージが元気付けないと、リタもミシェルも天国へ旅立って、ひとり現世に残されたヨナは悲しみに暮れて終わってしまうんです。登場するからにはバナージにもこの物語に何かしら参加してもらいたい。それに何かが始まりそうな希望を示した『ガンダムUC』のラストからすると、『ガンダムNT』のU.C.0097年は、ディストピアに映ってしまう。結局は何も変わっていない。でも、そういう中でもバナージは頑張っている。それをファンに伝える意味も含めてのラストですね。

コア・ファイターは“鳥”をシンボライズしたデザイン

──ナラティブガンダムは3種の装備に、サイコ・キャプチャーやコア・ファイターなどギミックが満載で、一本の映画に収めるのが大変だったかと思います。

吉沢ナラティブガンダムはヨナの心情とリンクさせようというのが最初のコンセプトだったんです。『不死鳥狩り』のヨナはスタークジェガンに乗っていて弱々しくて、アニメでも“弱さ”を大事にしたかったんです。最初にカトキハジメさんから「どんなガンダムにしたいですか?」と聞かれて、ヨナのキャラクター原案を見ているうちに“痩せていて頼りない”ガンダムがいいんじゃないかという発想にたどり着いたんです。劇中でも戦闘時は装備満載で派手だったのが、パーツを剥いでいくと痩せて弱々しいガンダムが表れる。それにシンクロするように、ヨナもサイコスーツを脱いだら痩せている。あとはフェネクスがマシーンを超越した存在として描かれるので、ナラティブガンダムは戦場が変わるごとに装備も換えて、よりマシーンらしくすることで対極として見せたかったのもあります。

──コア・ファイターを搭載するのは、当初からシナリオ上で決められていたのでしょうか?

福井コア・ファイターがないとフェネクスのコックピットまで辿り着けないので。気がついたときには羽をつけて鳥のようになっていました。

吉沢そこは自分がカトキさんにお願いした部分です。『ガンダムNT』は“鳥”で始まって“鳥”で終わる映画にしたかったんです。冒頭では海鳥が飛び交っていて、目を覚ましたヨナがカーテンを開けた先の空にも鳥が飛んでいるんですよ。この映画には至るところに“鳥”がいるんです。ベタですが、その作品のシンボルを至る所に仕込む演出をやっていて、そのひとつがコア・ファイターですね。

福井カモメのようなコア・ファイターになってますね(笑)。

吉沢コア・ファイターはすぐ壊れちゃって数カットしか出てこないんですけど。カラーリングはRX-78-02 ガンダムのコア・ファイターに準じています。翼が開いたら赤と青が見えるデザインになるようにカトキさんにまとめていただきました。

トータルの流れと光の鮮やかさに注目!

──5月24日に『ガンダムNT』のBlu-rayがリリースされます。改めてチェックしてほしいポイントはどこでしょう?

福井アニメーションは比較的アニメーター出身の監督さんが多いなか、吉沢監督は珍しく演出畑出身なんです。『ガンダムUC』の監督、古橋一浩さんはアニメーター出身で、2人の演出の違いをチェックしてみるのもポイントのひとつです。1カットを切り取って注目するというより、シーンの流れに気を配っていく。そこに演出畑の人の本領みたいなところがあって、『ガンダムNT』はまさにそういう作品なんです。見た方はわかると思うんですけれども、一度見はじめたら一時停止ボタンを押せないんです。シーンが途切れるところがまったくない。それは演出畑出身の吉沢監督らしいつくりなんですよ。だからトータルの流れを何度でも味わってもらえたらと思います。

吉沢Blu-ray豪華版には、4K ULTRA HD Blu-rayが付属され、光の処理が鮮やかになっています。フェネクスの青いサイコフレームだったり、IIネオ・ジオングのサイコシャードだったり、発光の色味をより感じてもらえるようになるはずです。Blu-rayでは劇場とはまたひと味違った4Kならではのビジュアルをお届けできるように励んでおります。そういうところも楽しんでいただけるとうれしいです。

PROFILE

吉沢俊一(よしざわとしかず)
アニメーション監督、演出家。『鉄のラインバレル』『FAIRY TAIL』『ガンダム Gのレコンギスタ』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』などの演出を手がける。本作で監督デビュー。

PROFILE

福井晴敏(ふくいはるとし)
1996年に『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞して作家デビュー。小説からアニメ、実写映画など活躍は多岐にわたる。企画で参加した『空母いぶき』が5月24日に劇場公開予定。

<Blu-ray&DVD発売情報>

▲カトキハジメ 描き下ろしスリーブケース

▲金 世俊(アニメーションキャラクターデザイン) 描き下ろしジャケットイラスト
機動戦士ガンダムNT Blu-ray豪華版
(4K ULTRA HD Blu-ray同梱)
【ガンダムファンクラブ、プレミアムバンダイ
A-on STORE限定/初回限定生産】

2019年5月24日発売
¥12,800(税抜)

機動戦士ガンダムNT Blu-ray豪華版
(4K ULTRA HD Blu-ray同梱)

2019年5月24日発売
¥9,800(税抜)

機動戦士ガンダムNT Blu-ray&DVD
2019年5月24日発売
Blu-ray:¥7,800(税抜)
DVD:¥6,800(税抜)

機動戦士ガンダムNT Blu-ray豪華版(4K ULTRA HD Blu-ray同梱)【A-on STORE限定】特設サイト

機動戦士ガンダムNT 公式サイト

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