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『ガルパン』きっかけで戦車好きに。大洗を訪れるファンが「お母さん」と呼んで慕う、創業100年以上続く豆腐店の奥さん。田山美千子[ガールズ&パンツァー 大洗女子学園掲示板]

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『ガールズ&パンツァー』の舞台・大洗で、より作品を身近に感じている方々に、作品と出会ったきっかけやエピソード、作品への思いなどを聞いていく『大洗町めぐり~大洗の今、そしてこれから~』。第13回は日野屋商店 田山美千子さんにお話を伺いました。

『ガルパン』きっかけで戦車好きに。大洗を訪れるファンが「お母さん」と呼んで慕う、創業100年以上続く豆腐店の奥さん。

──最初にお店のPRをお願いします。

100年以上続いている豆腐屋で、主人が4代目になります。小売りと卸しを専門にしています。学校給食や大洗ホテルさんなど宿泊施設にも納品させていただいています。

──お豆腐屋さんと言えば早朝からお仕事をされているイメージがありますが、今もそうなのでしょうか?

昔は夜中に製造して朝に納品していました。それは豆腐を水に沈めておくので早く使わないと不衛生だったからです。でも今は食品衛生法の基準が変わって豆腐をパックなしでは納品できなくなり、出来立ての状態をパックして一気に冷やすんですよ。そのやり方になってからは早朝作業はなくなりましたが、そのぶん加工の手間は増えましたね。

──では日野屋さんが『ガールズ&パンツァー』と出会った経緯をお聞かせください。

私はアニメはほとんど見ないのですが、バンダイナムコアーツの関根陽一さんのお父さんと昔から付き合いがあって、一緒に町役場の青少年相談員を務めていたんです。で、ある日「ウチの息子が関わるアニメがあるので観て」と言われたので、「これは後から感想を訊かれるな」と思ってBS放送を録画し始めました。まいわい市場の常盤良彦さんから、アニメの舞台として大洗が出てくると聞いたのはその後ですね。その常盤さんもウチの隣に18年くらい住んでいたご縁があるんですよ。

──大洗町の皆さんはファンが訪れるようになってから『ガルパン』を観始めた方が多いので、オンエアを最初からご覧になった方は貴重ですね。

でも正直、第1、2話を見た時は意味が分かりませんでした(笑)。あと「パンツァー」の「ツァー」がおばちゃんには発音しづらかったです。大洗の町が登場してから親しみを持つようになりましたが、「学園艦」の意味が分からなくて、最初は本当の街と艦の中との区別が付かなかったんですよ(笑)。もちろん戦車の種類もよく分かりませんでした。

──『ガルパン』に魅力を感じるようになったのはいつ頃ですか?

アニメを見ている内にあんこうチームを応援したくなったり、小さな発見を楽しめるようになったんです。そして決定的だったのは第8話のプラウダの「カチューシャ」合唱シーンで、ノンナさんの声と口の動きがあまりにもピッタリで感動しました。あのシーンは何十回も観ましたし、それから主人にも『ガルパン』を勧めました。それまで主人は観ていなかったんです(笑)。

──ノンナの歌に感動して戦車パネルはIS-2(冬季迷彩)をリクエストされたのですか?

いえ、パネルを選んでくれたのは商工会の坂本博局長で、「豆腐屋だから白い戦車が良いだろ」という理由でした(笑)。また戦車パネルってサイズが大きいので設置が難しいのですが、ウチは店の間口が広いので邪魔にならないだろう……なんて理由もあったそうです。

──キャラクターパネルを設置したお店はパネルを我が子のように扱っているそうですが、戦車の場合もそうなのでしょうか?

もちろん可愛いですよ。たとえ鉄でも(笑)。「豆腐屋だから白」「間口が広い」という理由ですが、ちゃんと私が興味を持った戦車が届いたのは縁を感じました。

──本作を通じて戦車に興味を持たれたそうですね。

知らなければ、知らないなりの疑問が浮かぶんですよ。「戦車ってあんなに早く走れるの?」とか、「女子の腕力で砲弾詰められるの?」とか。そこでアニメの設定資料集を買ってきて自分なりに勉強しました。プレゼントしてくださると言ってくれたファンの方もいましたが、自分の知識になるものは自分のお金で買いたいじゃないですか。お店に置いてあるのはファンの皆さんからいただいた寄贈品で、自分の部屋にあるDVDやブルーレイは自費で買っています。

──豆腐店という業種では難しいと思いますが、ファンが持ち帰れるような商品の販売はされているのでしょうか?

ウチは遠方からの方や電車で来られた方には「お買い物は結構ですので大洗を楽しんで行ってください」とお声をかけています。イベントの時に厚揚げを販売したこともありますが、ウチは主人と私だけなので対応するのが大変なんですよ。他に丸五水産さんさんの海鮮丼にウチの豆乳杏仁とバッジを付けたり、さかげんさんとプラウダ繋がりのコラボもやりました。このようなお店同士のコラボは『ガルパン』きっかけで始まりました。

──好きなエピソードは何でしょう?

やはり第8話のプラウダの合唱シーンです。あと第11話でみほさんが戦車から戦車に飛び移るシーンも好きです。あのシーンは手に汗握りながら観ていました。別の自分が「女子の跳躍力じゃ飛べないだろう!」とツッコミつつ、なぜか本気で応援してしまうんですよ(笑)。きっと『ガルパン』には観ている人を本気にさせる要素があるんでしょうね。

──好きなチームはやはりプラウダ高校になるのでしょうか?

もちろん1番はプラウダです。でも『ガルパン』って観ている内に好きなチームが増えるんですよ(笑)。各校の特徴が分かるようになると、聖グロリアーナなら聖グロリアーナの良いところも見えてくるじゃないですか。さらに『アンツィオ戦』や『劇場版』まで見るとチーム毎の活躍や戦略が楽しめるようになりますからね。ちなみに孫はお銀さんのファンです。妹が生まれた時は「名前はお銀がいい!」と言っていましたが、さすがに採用はしませんでした(笑)。

──『最終章 第1話』はご覧になりましたか?

先ほどお話しした関根さんのご実家である豊年屋さんご夫婦と一緒に観に行きました。そしてオープニングのテロップに「音楽プロデューサー:関根陽一」と出たときはお母さん泣いていたんですよ。私も感激しました。でもお父さんは「見逃しちゃった!」なんて言っていました(笑)。

──『ガルパン』という作品の魅力は何だと思いますか?

大勢の女の子が出るけどお色気で売るわけではなく、戦車で戦うけどケガをしない。だから自然にお話に感情移入が出来るんだと思います。大洗の経営者達も「ダメ元で楽しんじゃえ!」という想いがあったから、今があるのではないでしょうか。

──『ガルパン』に接したことで趣味が広がったそうですね。

総火演(富士総合火力演習)に2回も行きました。あれを見ると『ガルパン』がどれだけ地形を把握して描かれたアニメなのか分かりますね。ウチはちょうど日曜定休なので朝3時くらいに家を出て、早朝の練習から拝見させていただきました。10時の本番より前に練習があるとか、車でどう行けば良いかとか、そういう情報をファンの皆さんが教えてくれました。そして観閲式でヒトマル(10式戦車)にエンジンかけるんですけど、もんもんと出てくる黒煙を見て感心しちゃうんですよ。『ガルパン』を見ていなければうるさいだけの光景だったと思います(笑)。

──10式戦車を「ヒトマル」と呼ぶ豆腐店の奥さんは貴重な存在だと思います(笑)。

私ってフェチなのかも知れません(笑)。そして感動したがりな性格なんですよ。でも、こうして戦車を見て感動できるのは、今の日本が平和だからなんだと実感しました。

──今年の「あんこう祭」の印象はいかがでした?

3歳の孫と一緒に行ってきました。孫は0歳の時から来ていたので人生4度目のあんこう祭になります(笑)。やはりステージ前の人が多かったですね。そしてファンの皆さんも回を重ねる毎に研究しているんですよ。たとえばステージメインの人は朝5時に行ったら10列目だったので、「来年は4時に行きます」って私に報告してくれるんです。いや、いちいち私にことわらなくても良いのに(笑)。その一方でステージに人が集中している間に積極的に街中を回る人もいますね。でも今年はマリンタワー側のスピーカーが聞こえにくかったらしく、ミニミニホビーショーのスピーカー前に多くの人がいました。あと、これは鹿島臨海鉄道の人から聞いた話ですが、今年のあんこう祭は切符の販売数が過去最高だったそうです。ただ大洗まで来るタイミングは分散していて、木曜から来ていた人も多かったそうです。

──土曜日の「舞祭」から参加するため金曜日に来る方がいるのは知っていましたが、さらに前日の木曜日から来る人もいたのですか?

あんこう祭で使うテントって木曜には芝の上に転がっているんですよ。その光景を見るだけでも楽しいんだそうです(笑)。そんな話をウチに来てはファンの子が話してくれるんですよ。ここでは特に『ガルパン』向けの何かをしているわけでないのに。冬季限定で、おからアートを作っているくらいですね。

店内に展示してある、奥さん手作りの〈おからアート〉。「最近はおからを料理に使う人も減ってしまい、すっかり産廃物になっているんですよ。そこで何か再利用できないかと思って始めた遊びです。水で洗ってから塩漬けにしているので1ヶ月は持ちますが、夏場は早く傷んでしまうので作っていません」

──翌日の月曜も多くの方が残られていましたね。

月曜なのに普段の週末よりも人が多く、中には火曜まで大洗にいた方も多かったそうです。祭の後の寂しさが辛くて、つい長く滞在してしまうそうなんです。そんな人達は海楽フェスタや八朔祭の時ももう一泊するそうです(笑)。4、5年前はあんこう祭に参加していたお店は翌日を臨時休業にしていたんですよ。でも今年は多くの店が開店していましたね。お店の人達は「ファンの人達が食事難民になるのが気の毒だ」って言っていました。決して商売でやっているわけではないんですよ。ただ祭の後なので食材が思うように揃わないのが大変だそうです。

──日野屋さんが思う大洗の魅力とは何でしょう?

変なおじさん、おばさんが多い事だと思います。ちょっとノリが変ですもんね(笑)。大洗の人達のハマっ子らしいノリは、知らない人が聞いたら喧嘩を売ってるように見えるかも知れません。ここに嫁に来て間もない頃、スーパーにいたおばちゃんたちの何気ない会話が喧嘩に聞こえて、怖くてそっちの売場に行けなかった事がありました(笑)。ウチの旦那も口が悪いですからね(笑)。でも、そんな人達にファンの皆さんが町を盛り上げようと色々なアドバイスをしてくれて、それがちゃんと納得できる提案だったりするんですよ。そのやりとりが大洗とファンの皆さんを互いに成長させていますね。そして、その仕掛け役である杉山プロデューサーの人柄や、キーマンである常盤さんの活躍も大きいと思います。常盤さんが県外から来た人である事が良かったんでしょうね。もし地元民だったら周りから色々な要求を出されて動けなくなりますからね。また彼は発想がユニークなんですよ。『ガルパン』以前から水戸のクックファンで「受験生応援のとんかつ屋」みたいな看板を出していましたし。

──日野屋さんからご覧になったファンの印象はいかがでしょう?

昔から来ている人と最近来るようになった人ではタイプこそ違いますが、基本的には真面目で義理堅い人が多いですね。『ガルパン』好きにはミリタリーファンとアニメファンの両方がいますが、ガチのミリタリーファンも「あのチームのどの子が良い」とか言い始め、アニメファンも好きなキャラクターの乗っている戦車に詳しくなっていくんですよ。それが見ていて楽しいです(笑)。あと最初にパネルを設置した時(2013年 海楽フェスタ)は、チェックのシャツにリュック姿の人が多かったんですよ。でも『ガルパン』Tシャツが販売された後からは、色々な柄を着るようになり個々の違いが出てきました。しかも、そのTシャツも一人で何十枚も持っているんです(笑)。でも、そんなTシャツ類も安かろう悪かろうでは納得せず、高額でもキチンとしたものでないと買わないそうです。皆さん、こだわりがあるんですよ。

──お店に来られるファンの印象はいかがですか?

ウチに来る人は地元のお土産を持ってきてくれて、「お母さん、いつも買い物できなくてすいません」って言うんですよ。あと1年間に100日以上大洗に滞在する人もいます。この町は何回来ても飽きないそうなんですよ(笑)。大洗が好きになって移住してきた人も100人ほどいて、ウチによく来ていた九州出身の方も引っ越してきました。私もときに「たまには帰省して親に元気な顔を見せに行きなさい」って言っています。なんか自分の息子よりファンの人の顔を見ている方が多いですね(笑)。

──今後の抱負、もしくは予定されている事があればお教えください。

ウチは豆腐屋なのでファンの皆さんに提供できるものがなかったのですが、今年初めて冷や奴スープにサメさんチームとあんこうチームのバッジを付けて販売させてもらいました。ノンナさんはさかげんさんの担当なのでウチからグッズは出せませんが、2019年の夏までにはノンナさんとIS-2の缶バッジくらいは出したいと思っています。大洗にはノンナさんのグッズがないので、戦車を預かっている私が出すのが責任だと思っています。ご期待ください。

──最後に次の取材相手のご紹介と、その方へのメッセージをお願いします。

日照プラント工業さんに繋ぎます。本当に変な親父なんですよ。その一言が推薦理由です(笑)。「日照さんへ、これからも遠慮なく変なおじさんとして活躍してください」。まぁ変なおばさんに言われたくないでしょうけど(笑)。

PROFILE

田山美千子(たやま・みちこ)
1958年9月27日生まれ、大洗出身。小学校卒業後に東京の中学校に進学し、以降は叔母夫婦の家で暮らし始める。やがて大学に通うため東京に下宿していたご主人と出会い、結婚して豆腐店の奥さんとして再び大洗で暮らすようになる。なお幼少時に見ていたアニメは『巨人の星』と『アタックNo.1』。

<Blu-ray&DVD情報>


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<上映情報>


ガールズ&パンツァー 最終章 第2話
2019年6月15日(土)劇場上映!

ガールズ&パンツァー 最終章 公式サイト

ガールズ&パンツァー 大洗女子学園掲示板

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