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TVシリーズ第1期&第2期を収録したBlu-ray BOXが発売!『境界線上のホライゾン』川上 稔 × 小野 学スペシャルインタビュー

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人気作家・川上 稔による原作本編完結のクライマックス突入を記念して、大ヒットを記録した学園戦国ファンタジーアニメ『境界線上のホライゾン』のTVシリーズ第1期&第2期を収録したBlu-ray BOXが、川上稔書き下ろし小説や完全新作特典アニメーションなど豪華特典を満載して2018年12月21日に発売決定! そこで今回は、原作の川上 稔さんと監督の小野 学さんを直撃したスペシャルインタビューをお届け。TVシリーズの制作秘話はもちろん、Blu-ray BOXに付いてくる特典の裏話など、ここでしか聞けない話が盛りだくさん! お二人の本音トークを見逃すな!

原作は凄く面白くて、アニメ化する際に色々なチャレンジができるなと思った [小野]

──川上さんは『境界線上のホライゾン』で描かれる独創的な世界をどのようにして思い付かれたのですか?

川上 パソコンの黎明期だった小学生の頃は、洋風ファンタジーが出回っていたので、自分は和風で何かを作ろうと思って、テーブルトークのシステムを自作して遊んでいました。当時まだライトノベルという呼び方がなかった中学生の頃には角川スニーカー文庫などを読んで、自分でも幾つか作品を書いてみました。その時に『終わりのクロニクル』(以下『クロニクル』)のベースになるものは書けたんですけど、『境界線上のホライゾン』(以下「ホライゾン」)の世界は書けなかったんです。まず冒険に出る、始めの町を書いて、次に隣の町の個性を決めたんですけど、そうなると始めの町もその影響を受けているはずじゃないかと思い始めて、キリがなくなってしまったんです。こうなると世界を全て作らなきゃ書けないなと思って、そこから作り込みが始まって延々とやりました(笑)。大学生の頃にある程度決着が見えてきて、『クロニクル』が終わったタイミングで編集者から「今だったら書けますよ」と言われました。色々なプロットが散らばっていたので、編集者に電話で始まりから終わりまでを話すという方法でまとめていきました(笑)。30分くらい話していると途中で詰まるので、そこからまたまとめ直して。結局、2年くらいは準備期間に充てましたね。最終的には約4時間かけて電話で全てを話すことができたので、これならいけるなと(笑)。ちょうど『クロニクル』が終わったあたりで今まで書いたものを全部勉強し直すために、世界の歴史の本を1日3冊ペースで読むのを繰り返していたら、大体1年半くらいで、新しく出た本に書いてあることが全部理解できるし、予測がつくようになってきたんですよ。その勉強期間のおかげもあって、『ホライゾン』を書くことができました。いきなり作った訳ではなくて、ひたすら積み重ねですね。最初は拙かったけど地道に繰り返して作り上げていきました。

──小野さんは原作を読まれてどのような感想をお持ちになりましたか? また、アニメ化の話を聞いた時はどう思われましたか?

小野 アニメ化の話を聞く前に本屋で見かけて、“ライトノベルなのにこの分厚さはないよな”と思っていました(笑)。サンライズ・プロデューサーの平山さんがアニメ化を熱く勧めてくれたので、その時に原作を読ませて頂きました。凄く面白くて、アニメ化する際に色々なチャレンジができるなと思ったんですけど、その一方で中途半端にはできないなと感じました。平山さんと相談した時に「僕も覚悟を決めてやります!」と言ってくれたので、お互いに腹を括ってTVアニメの制作に突入しました。

編集部に初稿を渡しに行ったら会議室に来てくださいと言われて、遂に打ち切りかと… [川上]

──TVアニメの制作を始める前に、川上さんと小野さんで打ち合わせはされたのですか?

川上 TVアニメ化の話自体はある程度固まってからこちらに話がきたのですが、いきなりだったんですよ。あれは原作3巻の<中>を書いている頃で、編集部に初稿を渡しに行ったら会議室に来てくださいと言われて、遂に打ち切りかと…。ところが、行ってみると関係者が勢ぞろいしていて。それがTVアニメ化の話だったので、最初は話が全く読めませんでした(笑)。始めのうちは懐疑的だったんですけど、熱意がすごく伝わってきたので、こちらも腹を括るしかないと。ただ、裏側にある資料がどれだけ膨大なものかを知らないはずなので、こちらも全面的に協力しないとヤバイなと思って、とりあえず家にある全ての資料を送りました。それからしばらくして、定期的にサンライズへ行って、小野さんを始めとしたメインスタッフの皆さんと打ち合わせをするようになりました。。話を聞いているとやる気が伝わってきて、嬉しくてニヤニヤしていましたね(笑)。メインのキャラクターデザイナーを藤井(智之)さんに決めたのがスタートの回だったと思います。実際に上がってきたキャラクターデザインは、キャラクター原案のさとやすも「自分が描いたんじゃないかと思った」と言うくらい似ていたので、大丈夫だと思いました。こちらが最初に出した条件が原作準拠だったので、衣装に込めた意味も残した形で上手く表現していただけました。

小野 週に1回、7〜8時間はやっていましたね。

──長大で独創的な原作をTVアニメ化する際に苦労されたことはありましたか?

小野 原作を読んだ時点でスタッフが一丸にならなければできないことは分かっていたので、制作を進める前に、現場に対して「終わった後に恨んでくれて構わないから、みんなで腹を括って頑張ろう!」と言葉を掛けました。アニメ化する際に、原作の意図は完全に拾おうという話はしていたので、映像作品として表現する上で通常は必要のない部分も逃げずに真正面からやっています。物量という点で現場に負担をかけてしまったんですけど、放送直後にネットで評判が見られるようになっていたので、自分たちの姿勢をきちんと理解してもらえたことが分かって、当時若かったスタッフたちはその反応の早さに快感を覚えたみたいです。視聴者からの感想が次の作業のモチベーションになって、それが上手く良いスパイラルにハマりましたね。

キャスティングは、トーリの福山くんとホライゾンの茅原さんありきで決めていきました [小野]

──それぞれ原作者と監督という立場から、『境界線上のホライゾン』をTVアニメ化する際にここだけは譲れないポイントはありましたか?

川上 基本は小野さんがダメって言ったらダメ、最終ジャッジは小野さんなんです。

小野 そこは単純にデッドラインがあるので…(笑)。時間もお金も無制限ではないから、改変はしないけどできるラインを探るのは任せてもらっていました。

川上 当時はどこかしら改変が入っている作品が多くて、原作準拠のライトノベルアニメはあまりなかったので、そこは手探りだった気がします。

小野 改変しない代わりに、どこを取捨選択するのかについては川上さんを交えたシナリオ会議で結構話し合いましたよね。

川上 脚本の浦畑(達彦)さんの勘が凄く良かったですね。最初の会議の時に、原作通りに話を進めないと難しいということをハッキリと言ってくださって、全体の流れが決まりました。

──TVアニメ『境界線上のホライゾン』には多くのキャラクターが登場し、それに声を当てる声優の方々も実に豪華です。キャスティングはどのように決まっていったのですか?

川上 基本はアニメ側にお任せしていましたが、平山さんに相談されたので、インノケンティウスのイメージは中田譲治さんですと冗談で言ったら、本当に決まって慌てましたね(笑)。

小野 キャスティングは原作を読んだ自分の中のイメージで指名したんですが、まず、トーリの福山くんとホライゾンの茅原(実里)さんありきで決めていきました。トーリの役が決まった時に福山潤くんの声を聞いてもらったんですけど、川上さんの中でトーリのイメージは密かに福山くんだったという話を教えてもらいました。

川上 以前ゲームを作った時に福山さんと仕事をしたことがあって、その頃から凄く上手でした。トーリのセリフを読んだ幾つかの音声を聴いたら、これは間違いないなと。

──今だから言える制作当時の印象的なエピソードがあればお聞かせください。

川上 キャスト全員が手探り状態だった第1話のアフレコのテスト収録で、喜美役の斎藤(千和)さんが振り切った演技をやってくれたんです(笑)。世界観が特殊なので皆さん探り探りだったと思うのですが、飛び出した喜美にみんなが負けまいという感じで付いていくような形になったので、斎藤さんが勝利の女神のように見えました。あとは、小野さんとのやり取りの中で挙がったのは鈴についてです。鈴は目カクレキャラなので目は描かないって決めていたんですけど、最初のキャラクターデザインに閉じた目を描いてあるものが上がってきていて、目を描くべきかどうかで1日話し合いをしたんですよ。結局夜になってしまって、どうやってまとめようかなと考えていたら、小野さんが休憩中にドーナツを買ってきてくれたんです。それで気を使わせてしまったなと反省して(笑)、その時からこの人には迷惑をかけないようにしようと思いました。

小野 アニメは動いているので、動きの最中に前髪がずっと同じ位置にあるのは不自然なんですよ。目が描きたかった訳ではなくて、あるはずのところに目がないっていうのは絵として成立しないだろうなと思っていました。結果として鈴はアクションがなかったので、絶対に目は描かないと決めて、髪がなびいたとしても上手く隠すやり方でいこうという話になりました。

川上 原作準拠を掲げていましたけど、どこまでやるかの線引きに関しては度々悩みましたね。

制作現場が、夜になってもみんながいる学園祭みたいなイメージでした [川上]

──第1期と第2期を合わせた全26話、改めて見返してみてどのような感想をお持ちになりますか?

小野 今回のBlu-ray BOX用の映像特典を作るために見返してみて、“何でこんな作品をアニメで作れたんだろう?”って他人事のような感想が湧いてきました(笑)。現場のスタッフが若くてやる気に溢れていて、改めて奇跡的なことだったんだなと思います。その時の巡り合わせで上手く歯車が噛み合ってこのアニメができたんだなと。今は放送当時より技術的な部分は上がっていますが、同じレベルの作品を作ろうと思っても簡単にはできないと思います。あの時期にあのラインまで到達できたアニメを作れたことは、自分たちスタッフの中でも自信になっていますね。

川上 見返すと当時の熱気を思い出しますね。制作現場が、夜になってもみんながいる学園祭みたいなイメージでした。夜に訪ねて、そのまま打ち合わせに入って夜中の3時に終わったりすることが普通でしたね。終電がないから家まで歩いて帰ったり…(笑)。だから、見るとすごくやる気が出ます。面白さとは別に執念をすごく感じます。

──TVアニメ化されたことで、川上さんのその後の執筆に何か影響はありましたか?

川上 友人が開催した同人誌のイベントを偵察しに行ったら、なぜか流れで原作者として参加することになってしまって、それ以降はそういったイベントに出るようになりました。交流は広がるし、絵を描く技術はどんどん高まっていきました。生活の幅が倍ぐらいになった気がします。それと、小説を書く作業は基本的に一人なので、人生を投げているような感じはあるんですけど(笑)、サンライズに夜中行くと、頑張っている人は他にもいるんだなと思えたんです。孤独じゃないことを意識できたのは物凄く大きかったですね。作品を作るために頑張っている人がこれだけいるんだということを知れたのは執筆活動を続けて行く上で大きな経験でした。

これは最後のお祭りなので、ドーンと一発デカい花火を打ち上げたい [小野]

──2018年12月21日発売のBlu-ray BOXには、封入特典として川上さん書き下ろしの小説、映像特典として完全新作特典アニメーションが付いてきます。それぞれの内容を教えてください。

川上 小説は、映像特典「完全新作特典アニメーション」で描かれる戦闘シーンの翌日の夜の話です。みんなが集まって三河の時の話をするんですけど、親たちは自分の子供たちに誇張して話すんです。その一晩のバカ話を書いていきながら、少し泣かせるような要素も入れていくつもりです。原作でも、「完全新作特典アニメーション」でも描かれていない隙間を描いた作品なので、ぜひ楽しんでください。

小野 「完全新作特典アニメーション」は原作のアニメ化していない部分を描いています。TVアニメの第1期と第2期は原作の2巻分(計4冊)に当たるんですけど、3巻以降もアニメで見たいというファンの気持ちも分かるので、どこか少しでもいいから動いているトーリたちをもう一度作れないかという想いはありました。

川上 いざ何をやろうかとなった時にいくつか候補があったんですけど、Blu-ray BOXの発売が原作の完結する頃に重なるので、最終章に近い辺りで印象的な戦闘シーンをダイジェストでしっかり見せて、その後に本編の最終章をアニメで描いたらファンに喜んでもらえるんじゃないかと思いました。当時はまだ小説の原稿を書いていなかったので、自分のほうでアニメ用にプロットを用意し、それをもとにシリーズ構成の浦畑さんにシナリオを書いてもらいました。

小野 スタートは2015年の終わり頃で、絵コンテは2016年の6月には上がっていましたね。最初は、既発のパッケージに特典として付けた書き下ろし小説やサイドストーリーの『ガールズトーク』をアニメとしてやったらどうだろうかという案も出たんですけど、結局ファンが一番見たいのは結末に近いところで動いているトーリたちなんじゃないかという結論になりました。

川上 ただ、戦闘シーンについてはみんな目を逸らして話をするんですよ(笑)。まず、技術的な問題もあって武蔵を動かしての派手な艦隊戦は難しい。その中で小野さんと話し合って、艦隊戦は描かずになるべく艦上戦闘、もし艦隊戦をやるとしても主砲での砲撃程度に収めて、キャラクター中心の戦闘に重点を置くことが決まりました。

──また、特典CDに収録される新規楽曲の歌詞も川上さん書き下ろしです。TVアニメ化の際に手掛けた15曲も含め、作詞される際に川上さんが意識されていることは何かありますか?

川上 キャラクターのイメージソングを作らないことですね。なぜそのキャラクターのイメージソングをキャラクター自身が歌うのかという矛盾があるじゃないですか。この歌は一体どう作られて誰が歌っているんだと。その世界の中でそういったイメージソングは存在しないはずなんですよ。だから、『ホライゾン』の世界の中のカラオケで歌われている歌をキャラクターが持ち歌にして歌っているという設定にするなどして書いています。

──最後に、Blu-ray BOXの発売を楽しみに待っているファンへメッセージをお願いします。

小野 これは最後のお祭りなので、ドーンと一発デカい花火を打ち上げたいなと。その打ち上げにみんなが最後まで付き合ってくれたら、いいものが見られるんじゃないかなという気持ちで頑張っています。

川上 原作との連動もあるので、上手くこれが何かに繋がってくれればと思っています(笑)。TVアニメ『ホライゾン』の決定版、これ以上のものはないです。ぜひ楽しんでください。

PROFILE

川上 稔(かわかみみのる)
小説家。ゲームシナリオライター兼ゲームクリエイター。デビュー作『パンツァーポリス1935』で第3回電撃ゲーム小説大賞の金賞受賞。代表作は『都市シリーズ』や『AHEADシリーズ』など多数。

PROFILE

小野 学(おのまなぶ)
アニメーション監督。『咲-Saki-』シリーズ、『魔法科高校の劣等生』、『学戦都市アスタリスク』、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』などを手掛ける。

Blu-ray BOXの発売を記念し、新規生勉強会の配信が決定!
日時:10月19日(金)22:00~予定
出演:白石稔さん、東山奈央さん、新田恵海さん、
    川上稔さん(原作)、小原一哲さん(電撃文庫編集)
配信先:バンダイチャンネル  https://live.b-ch.com/horizon
    LINE LIVE  https://live.line.me/channels/91/upcoming/9760927

<Blu-ray BOX発売情報>


本編ディスク用(6面)
特典ディスク用(4面)
境界線上のホライゾン Blu-ray BOX
2018年12月21日発売
特装限定版:¥38,000(税抜)

境界線上のホライゾン 公式サイト

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