世界観

パトレイバーの世界観
(文 中島紳介)

メディアミックスの先駆け
「パトレイバー」はアニメ化を前提に企画され、OVAの発売と前後してコミック版がスタート。その反響を受け、最初の劇場版が制作された。続いて、通常のコース(TV→映画→ビデオ)とは逆をたどってTV版が放送開始。当初は何でもありの娯楽志向だったが、次第にコミック版とシンクロしながらキャラクタードラマへとシフト。さらにキャラクターを掘り下げるかたちで新OVAや小説版へと発展していく。それらのシリーズが一段落したあと、警察VS自衛隊の対決を描いた劇場版パート2が公開。パトレイバーの世界を極限まで先鋭化させたが、コミック版はその後も「企業ドラマ」的な要素も盛り込みながら、あくまでマイペースで足かけ6年に及ぶ連載を完結した。こうしたメディアを横断する形の作品展開は現在では当然のように行われているが、当時のアニメ界、特に原作ものでないオリジナル作品の場合はきわめて異例であり、「パトレイバー」はその先駆的な成功作となった。

シェアワールドとしての魅力
「パトレイバー」の面白さは、ハードなメカアクションからドタバタコメディまで硬軟自在。SFはもちろん、ミステリー、ホラー、社会派サスペンスに大人のラブストーリーもあり、そうしたバラエティの豊かさが多様化したファンのニーズに応えてヒットしたのだ。しかし、その根底にはリアルに構築された世界観や緻密な設定があり、スタッフ間にはそれを守ればあとは料理しだいとの共通認識が存在した。そうした自由度の高い作り方だからこそ、設定とキャラクターを共有するシェアワールド【例:クトゥルー神話、ワイルドカードシリーズなど】の形で、ビデオ、TV、映画、コミック、小説と各メディアの違いによって、またそれぞれの監督や作家の個性で作品世界が微妙に変化し、より豊かな拡がりをみせていったわけである。これは《ヘッドギア》という、それぞれにこだわりをもった作家性の強いクリエーターたちが原作者集団として存在したことも大きな理由だろう(※1)。
(※1)ヘッドギア:『機動警察パトレイバー』のために作られたプロジェクトチーム。すべてのシリーズの原作を担当する。構成メンバーは、ゆうきまさみ、出渕裕、高田明美、伊藤和典、押井守の5人。

世界観
舞台は20世紀末から21世紀初めにかけて--すなわち「パトレイバー」が製作された1989年より、約10年後の近未来。コンピュータとハイテク技術を駆使して開発された多足歩行型ロボット《レイバー》が一般化し、花形産業として軍用兵器から民間の土木作業用に至るまで様々な分野に進出している。特に日本では、地球温暖化による水位の上昇に備えて、東京湾に堤防を築き首都圏を防護、排水と埋め立てにより広大な用地の確保を目指した国家的大事業《バビロン・プロジェクト》が進行中であり、工事用大型レイバーの需要が飛躍的に増大。その大部分が首都圏に集中する形となった。これにより暴走事故やテロなどの《レイバー犯罪》も急増し、これを取り締まるために警視庁警備部に新設されたのが《特車二課》、通称パトレイバー中隊(=特車隊)である。《パトレイバー》とは、その名の通りパトロール・レイバーの略で、リボルバーカノンと警棒のようなスタンスティックを武器にもつ警察ロボット。レイバーを使った犯罪に対処するだけでなく要人の警護、災害時の警戒や交通整理などにもあたる。


「機動警察パトレイバー」原作者集団 ヘッドギア
押井 守(映画監督)
ゆうきまさみ(漫画家)
伊藤和典(脚本家)
高田明美(イラストレーター)
出渕 裕(メメカニックデザイナー)

 

 
バンダイビジュアル (C)HEADGEAR / EMOTION / TFC
本サイトはバンダイビジュアル株式会社が企画・運営しています。
(C)Copyright 2001 BANDAI VISUAL CO.,LTD. All Rights Reserved.一切の無断転載を禁じます。