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『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 名塚佳織 インタビュー

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「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」3部作の最後を飾る、『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』が11月26日(金)についに公開! これまでテレビシリーズ『交響詩篇エウレカセブン』から、16年間エウレカ役を演じてきた名塚佳織さんにインタビューを行った。満を持した形でエウレカが主役となった本作には、どのような思いで臨んだのか? 作品にかけた思い、そしてシリーズを重ねてきた感慨を語ってもらった。

──最初に台本を読んだ際にはどのような感想を持たれましたか?

以前から「ハイエボリューション」シリーズの3作目は、エウレカのお話を書いてくださると聞いていたんですが、エウレカを主人公に話を組み上げるとこういう物語になるんだとすごく驚きましたね。監督の京田(知己)さんに対しては、いつも「私の生活をどこかから見ているのかな?」と思うところがあって(笑)。現在、小学校に通う娘がいて、子育てをしている私にとっては考えさせられる内容になっていて、感情に嵌まる部分がすごく多い作品になっていました。今作では、エウレカは、アイリスというかつての自分と同じ立場の女の子と行動を共にするお話になっているんですが、エウレカとアイリスの関係はすごく身近に感じるんです。だから、想像を越えた何かをすごく考えたり、頭をフル回転してイメージを膨らませるようなことをせずに、現在私の中に芽生えている感情そのままで演じることができました。「エウレカセブン」という作品では、思い返すと今までもそういう自分の中で芽生えている感情にピッタリと乗って演じることができる瞬間が多かったんです。演じているエウレカは人間じゃない存在なのに、とても人間味溢れる瞬間が多くて。そうしたところが、「エウレカセブン」の世界観なのかもしれないと、改めて感じました。

──今回演じたエウレカに関しては、今の名塚さんだからこそ演じることができたということですか?

そうですね。これが、5年前、10年前だと母の子を思う気持ちや、小学生くらいの子を相手にどう接したらいいのかという部分は、頭の中でイメージしたり、資料を調べたりしないと演じられなかったと思います。そうしたやり方でも、できなくはないんですが、もしかしたら背伸びをした芝居になってしまったり、説得力が足りないセリフが存在してしまったかもしれない。でも、今だったら、そうした部分はしっかり理解しているので、無理なく演じられますし、そういう役を与えていただけているという感じがあります。

──これまでの「エウレカセブン」シリーズでは、レントンやアオという少年が主役の成長物語でしたが、「ハイエボリューション」シリーズでは、大人な物語に変わったように感じます。その変化に関してはどのような感想を持たれましたか?

それに関しては、私たちが大人になったからかなと思っている部分がありますね。最初のテレビシリーズはレントン=京田さんという感じで、京田さん自身がいい意味で少年の心を持っていたようなところがあるんです。だからテレビシリーズも京田さんのピュアな部分をかき集めた作品だったんですよね。それが、「ハイエボリューション」になると、今度はちょっと大人になったスタッフが、今の気持ちで「エウレカセブン」という作品を作ったらどうなるのか? という方向にシフトしたのかなと思っています。「少年が奮闘する物語」から、「大人の考えを持った者たちが世界を変えていくとしたら、どのように対応するのか?」 という部分にもスポットが当たっているので、物語の中身は大人の乱れた欲望や策略、一度行ったことを諦められない変なプライドの高さとか、そうした黒いものが渦巻いたものを描こうとしたのではないかなと。そういう意味では、「ハイエボリューション」は、テレビシリーズとは真逆の作品になっているのかなとも思います。

──それが一周回って、今回はエウレカとアイリスというキャラクターの成長物語になっているのも「エウレカセブン」らしいところではありますね。

やはり最後はピュアな心が勝ってほしいと思います。エウレカもいろんな渦に巻き込まれていたんですが、今作では感情を露わにして怒りの雄叫びをあげるシーンもあったりします。そこは私の中で、エウレカのピュアな心が出た瞬間になっているので、印象的でした。 私たちが最初の頃に少年少女の時代を演じたキャラクターが、今度は大人にならなくちゃいけない時期を迎えて、さらに次の世代にバトンを渡す。「エウレカセブン」という作品がこうした方向に着地するということは凄く驚きでしたが、ある意味今の状況を考えるとすごく納得できる部分もあります。テレビシリーズが始まった当初は、私もレントンを演じた三瓶由布子ちゃん、アネモネを演じた小清水亜美ちゃんもみんな20代に入ったばかりのまだまだ子供であり、周りからいろいろ教えてもらいながら考えて、でも尖ったところもありながらやっていたんです。でも、今の年齢になると、私たち自身も次に何を残していくかを考えながら行動しなければならないという年齢に差し掛かってきていて。本当に一緒に成長させていただいているし、学ばせてもらった作品だということを改めて思いましたね。

──大人になったエウレカに関しては、『エウレカセブンAO』でも演じられています。今回はその時とはまた違った方向でエウレカが大人に成長しているわけですが、そのエウレカの姿に関しては、どのような感想を持たれましたか?

今回の作品でエウレカが大人になっているということは、台本をいただいてから知りました。前作の『ANEMONE』の時にも、エウレカは第1作目に比べるとかなり幼くなっていたので衝撃を受けたんですが、今度はそこからの急成長だったので、また全然違うものが来たなという部分で、かなり驚きましたし、最初はどういう風に作っていったらいいか迷った部分もありました。

──今回は今まで演じて来たエウレカのイメージを作り直さなければならないという気持ちもあったということですか?

そうですね。作り直すことになるだろうなとは思いました。ただ、根本の部分は変わらないのかなという気持ちもあって、今までのエウレカありきで、もうちょっとしっかりしたところや訓練を積んだ女性であるところ、年齢感を上げた部分や、逆に幼くすべきところなどを含めて肉付けしていった感じですね。

──そうしたエウレカのイメージの増強や変化は、演じてみて楽しい部分でしたか?

楽しかったですね。私は、新しい風が吹くことは嫌いではないので。同じ人物でも、家族や友人と話をするときには接し方が変わるし、家族の中でも母と姉ではちがったりする。そういうことと一緒で、エウレカはエウレカであり、今回関わる人たちに対して、この年齢感のエウレカはどのように接していくのかを考えてやっていきました。だから、違和感は無かったですし、一から全部考え直さなければならないような混乱も無かったです。

──エウレカの演技は今までとはかなり違いますが、監督や音響監督から演じ方についてはオーダーなどはありましたか?

今回、登場して最初にするのが、アネモネとのやり取りだったんですが、どういう年齢でどのくらいの精神的な成長を遂げているかという部分で、どのように演じるべきかを調整するのにちょっと時間がかかりました。どれくらい大人になって、どれくらい子供っぽさを残すかということに関しては、京田さんたちと相談しながら作っていった感じですね。今回のエウレカは、見た目はすごく大人になっているし、肉体的にもトレーニングを積んでいる雰囲気になっている。これまでも、自分で戦ってはきましたが、やはり周りから守れているような存在で、自分の身ひとつで戦っているというよりは周りに助けてもらいながらという感じだったので。一方で、肉体的にも精神的にもすでにある程度成長していても、この物語の中でアイリスと行動を共にすることで成長するエウレカも見せたいということで、スタートからいきなりトップギアに行き過ぎて欲しくないとも言われました。最初は、そのバランスみたいなものの調整に少し時間がかかったという感じです。それから、アイリスとの旅を始めたところの演技に関しては、私自身が母親になってしまっているので、「子供の接し方が上手すぎる」というダメ出しをいただきました(笑)。本当に子育てを経験しているので、普通にお母さんみたいな発言になっているということから、「もうちょっとアイリスと初めて接している感じを出してほしい」というのは、よく言われましたね。 エージェントとして「出来る」という部分は自信を持って動いてほしいけど、子供に対してどう接していいのかわからない、思うように行かない焦りなど、揺れ動いてしまうところを出してほしいという要望はありました。

──コロナ禍ということで、収録も大変だったかと思いますが、他のキャストの皆さんと一緒に演じられたのでしょうか?

他の方とはご一緒できなかったんですが、アイリス役の遠藤璃菜ちゃんとはふたりで一緒に収録することができました。丸々2日かけてふたりで録らせていただいたので、本当に一緒に旅をしたような感じですね。すごく楽しかったです。とてもまっすぐで、良い意味で子供らしさもすごくある子でした。本当に一緒に録らせてもらえて良かったと思っていますし、収録している時間以外も、ブースでは大体ふたりきりなので、一緒におしゃべりしたり、コミュニケーションもとることができたのも良かったです。収録も1日だけだと何となくお互い探り合う形で終わってしまうので、2日間一緒に録れたこと、そして本編の順番通りに収録していく形だったので、後半に向けて仲良くなり、楽しく収録できたという印象はありますね。

──アイリスというキャラクターに対してはどのような印象を持たれましたか?

アイリスは、エウレカに対してちょっとケンカ腰の子で、自分の意見をしっかりと持った芯のある子供なんですよね。平気で大人に対しても言い返してくる。そこは一見可愛くないなって思わせる部分があるんですが、私的にはそこが好きでした。ある意味子供らしい真っ直ぐな意見を持っているわけですし、エウレカの冷たさにもひるまない、嫌なものは嫌だという彼女はかっこいいなと思いました。そうした部分の璃菜ちゃんのお芝居はすごく刺さるんですよね。根本はすごくいい子なのが滲みながらも、語尾がすごくいい意味で子供らしいトゲがあって。嫌味が無い嫌味を言う感じというか。子供ってこういうことを真っ直ぐに言っちゃうことがあるんですが、そういう子供らしさの要素を踏まえて、アイリスは徐々に可愛いなと思えてくるんです。アイリスは愛情を受けて育ってきた子なので、エウレカの言う冷たいひと言がすごく気に入らないんですよね。それを態度で出すところも可愛いし、それが結果的に物語の中でエウレカにもすごくいい影響を与えてくれる。同じように演じていた私自身も、璃菜ちゃんからいい影響をもらえました。

──今回は、小清水亜美さん演じるアネモネとの関係性も印象的に描かれていますね。

アネモネとは前作からの繋がりで、一緒に訓練をしてきたという経緯がありました。前作以上にふたりの距離が縮まって、「戦友」と呼べるような信頼関係になっていますね。そういう意味では、エウレカはアネモネに対して一番心を開いて、追い詰められた時にもアネモネに叱咤してもらい、彼女の言葉がすんなり心に入ってくるという関係性がすごくいいなと思っています。

──TVシリーズでは、ある意味ライバル的な存在だったアネモネとの関係性が、こういう形に落ち着くことも感慨深いですね。

本当にそう思います。あんなに真逆の立ち位置でいたのが、戦友になっている。それもひとつの成長なのかなって。若い頃は、似た存在だったり、同じくらいの年齢の人だと表面上は仲良くしていても、相手が嫌いということではないですが、内心はライバル意識が強かったりすると思うんですよね。私たちも、三瓶ちゃん、亜美ちゃん、この作品には出ていないですが、沢城みゆきちゃんは、同い年で、デビューもみんな一緒くらいということもあって、良い意味でライバル視するというか、お互いの存在を意識していたんですが、大人になってそこをひとつ踏み越えていくと本当の戦友になるというか。いろいろ大変だった状況をみんなで一緒に乗り越えたような感じがあって。エウレカとアネモネもそれに近いような感じで、お互い羨ましくてぶつかっていたけど、今はそこも引っくるめて「あの時はお互い大変だったよね」という話ができるようになっている。そういう思いがあるので、アネモネとのふたりのシーンはいくつかあるんですが、どのシーンも好きですね。

──先ほども仰っていましたが、そこも今だからこそ作れた作品という感じですね。

本当に今だからこそ作れたと思いますね。今だからこそ、エウレカをはじめ、いろんなキャラクターの気持ちを理解できる部分が多いですし、この映画の台本を5、6年前に渡されても、多分わからないところが多かったと思います。今の年齢で、今の環境にいるからすごく納得がいくものになったのは間違いないです。本当に「エウレカセブン」という作品は、自分のベストの状態のところを演じさせてくださるので、手に取るようにエウレカの気持ちがわかりますし、そういうところが参加していてとても面白いです。

──名塚さんから見た、本作の見どころを教えてください。

わりと世界観やお話が難しい作品ではあるんですが、1回目に観る時はそうした部分を無理に理解しようとせず、まずはエウレカとアイリスの旅物語だと思って、ふたりの関係性に重点を置いて観てもらえたらいいのかなと思います。女性が子供に対する母性のようなものが芽生える瞬間だったり、最初はうまくコミュニケーションが取れないけど、一緒にいるうちにだんだんお互いが思い合うようになる気持ちの部分が、今作の凄く素敵な部分だと思っているので、そこを観てもらえたら一番嬉しいですね。それ以外のこの作品らしい難しい部分も、「エウレカセブン」シリーズの魅力でもありますので、好きな方はガッツリと細かく何度も何度も観ていただいて理解を深めてもらえればと思います。そういう意味では、楽しみ方が2つある作品になっているのは間違いないです。

──では、最後に本作を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

テレビシリーズから16年ということで、長い間応援してくださった方々に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。当時楽しんでくださった皆さんも、社会人になったり、結婚されたりと素敵な大人になられているかと思います。その変わる環境の中でも、ずっとこの作品を応援してくださるというのは、すごく嬉しいです。この作品は、年齢によって見方が全然変わる作品だと思います。今回観ていただいていろいろ皆さんが思うところがあると思いますが、また5年後、10年後、見返してもらっても楽しんでもらえる作品になってくれるといいなと思っています。ぜひ劇場で観てもらえると嬉しいです。

 

PROFILE

名塚佳織(なづか・かおり)
4月24日生まれ。東京都出身。主な出演作に『コードギアス』シリーズ ナナリー・ランページ役、『ストライクウィッチーズ』リネット・ビショップ役、『ハイキュー!!』清水潔子役、『アマガミ』絢辻詞役、『僕のヒーローアカデミア』葉隠透役など。

<上映情報>

劇場版『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』
2021年11月26日(金)より全国ロードショー

▼EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 公式サイト
https://eurekaseven.jp/

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