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『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』 メカニカルデザイナー対談 玉盛順一朗×明貴美加 [宇宙戦艦ヤマト紀行]

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白色彗星帝国との戦いから3年――ヤマト、新たなる旅立ち。 玉盛順一朗氏、明貴美加氏に聞く、絶賛上映中『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』のメカニカルデザイン秘話!

■それまでのテレビマンガとは違う『宇宙戦艦ヤマト』との出会い

──『宇宙戦艦ヤマト』との出会いはどのようなものでしたか?

玉盛小学2年生のときに、たまたまテレビで観たのが始まりでした。それまでのいわゆるテレビマンガとは違う作品だと感じたのは木星の浮遊大陸のエピソードで、これは面白いなと思ったのを覚えています。もともと宇宙に対する興味があったので、カラー図鑑でも星や宇宙の巻ばかりを読みふけっていたような子どもだったんですよ。当時、うちには地球儀があったのですが、それに懐中電灯を照らして遊星爆弾ごっこなる遊びをしていたんです(笑)。ちょっと不謹慎ですけど、部屋の電灯を消して地球儀に懐中電灯の光を当てて、それをだんだん離していくと光の輪が広がっていく。劇中の描写を再現する遊びではあったのですが、その様子がとても幻想的で宇宙に対する興味が広がるきっかけになりました。

明貴僕の場合は父親が映画好きだったこともあって、父親の影響が大きかったんです。「戦艦大和が宇宙に行くアニメがやっているらしい」という話をされて、僕自身はへえそうなんだくらいだった。玉盛さんと同じようにある日テレビをつけたら『ヤマト』が放送されていて、たまたま観たというのが始まりでした。ちょうどそれがビーメラ星のエピソードで、この話はヤマトもほとんど活躍しないちょっと特異な内容だったんですよね(笑)。

玉盛そうですよね。

明貴ビーメラ星を探査する、100式探索艇が飛んでいるところを観て、100式探索艇のデザインとともにああこれは今までの子ども向けアニメとは違うぞという印象を強く受けました。本格的にハマったのはそのあとの再放送からですけど、初見からほかの作品とは違うという印象はありましたね。

──当時、劇場版はご覧になっていましたか?

玉盛僕はまだ小さかったので、劇場には行けなかったんです。小学生でしたから親と一緒に行かざるを得ないわけですが、そういう機会はありませんでした。

明貴僕は父親が連れて行ってくれたんですよ。当時の映画館は上映中でも入館できたから、途中から入ったんですよね。ドメル艦隊の三段空母が集結するところだったんですけど、そこから見始めて、最後まで見たあとに最初から観たという(笑)。

──『宇宙戦艦ヤマト2199』(以下『2199』)から10年近く経ちますが、これまでの軌跡を振り返ってみていかがでしょうか。

玉盛僕が関わり始めてからですと干支が一回りするくらいには時間が経ってしまっていて、本当に感慨深いですよね。本作は若い人たちへと引き継いでいくというのがシリーズを通してあるテーマなのですが、メカデザインに限らずメカ作画などでも前作から引き続き参加してくださるスタッフの方々がいてくださって心強かったですし、自分もヤマトに参加したいという若い人たちが増えてくれたのはとても嬉しかったことでもありますね。

明貴僕は今回の『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』からの参加になるのですが、もちろん『2199』からシリーズ全作を通して観ていました。個人的には「ああ、ヤマトが新しくなったなあ」と感慨深い思いでしたが、僕よりかなり年下の知人の感想が印象的だったんですよ。それは「やっと僕らが観れるヤマトが始まった」というんです。それはどういうことかと言うと、旧来のヤマトは先輩たちのものだという意識が強くて、なかなか(観る)敷居が高かったそうなんです。 そこに出渕裕さんが総監督をされる『2199』が始まるということで「ようやく僕らから観られるヤマトが始まる」と いう嬉しさがあったと聞いて、なるほどと思いました。こういうことは長く続いているシリーズものの宿命でもあるわけですが、入り口がわかりにくい上にエピソードをひとつでも見逃すとわからなくなるという構造がありますよね。アメコミのスーパーヒーロー物もそうですが、若い視聴者層を取り込むという意味でも今回の『宇宙戦艦ヤマト』のリメイクシリーズはやって良かったと感じています。

既存のデザインをもとに新しい要素を追加する

──今回のメカニカルデザインでこだわったポイントはどこでしょうか。

玉盛僕は地球側のデザインを担当していますが、今作では『2199』から『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下『2202』)のような大幅な技術的進化はあまりなくて、デザインコンセプト上での大きな変化は起きていないんです。むしろ、既存のドレッドノート級をもとにした改造艦をデザインするときに、古い方向に引きずられないかを心配していました。時代を経た新しさを加えつつも、取ってつけたような違和感がないようにバランスをとるのに苦労しました。たとえば実際の空母ですと全長が400メートル以上の大型艦で、数千人の乗組員が必要になるわけです。全長250メートルというドレッドノート級をベースにする場合、船体を輪切りにして飛行甲板を付け足すことで300メートル級の軽空母くらいであれば成立するかなと。企画会議の段階ではドレッドノート級の船体をベースに幅を増やしたり全長を伸ばしたりすることで本格的な空母化のアイデアをいろいろ考えましたが、それではヤマトよりも大きくなってしまうんですね。333メートルのヤマトよりは小さくしたいという福井晴敏さんからの要望があったので、軽空母のようなヒュウガとアスカが生まれました。ドレッドノート級をテストベッドとした試験艦という位置づけですね。それとコスモパイソンと5式空間機動甲冑も非常に苦労しました(笑)。コスモゼロ、コスモタイガーⅡとは別種の新型機をライバルとして登場させることで、それぞれの進化が描けるのではないかという意図でコスモパイソンはデザインされたという経緯があります。

 

ドレッドノート改級 補給母艦アスカ

 

ドレッドノート改級 戦闘空母ヒュウガ

明貴コスモパイソンは企画当初からイメージが明確にありましたよね。

玉盛そうですね。もともと『2202』ではコスモタイガーⅠが1機だけ存在するんですが、あれを小さくしたらどうなるだろうかというのが始まりでした。コスモパイソンは試作機とはいえある程度は量産されたものとして登場しているので、コスモタイガーⅡにとっては主力の座をかけたライバル機になるでしょうね。これ、本当は旧海軍の局地戦闘機『雷電』をもじってコスモライディーンという名前にしたかったんですけど、明貴さんに止められました(笑)。

明貴それはやめましょう、ということで(笑)

玉盛また『雷電』という旧作からのキャラクターも出すので難しいと、脚本の岡秀樹さんにも言われました(笑)。

 

試製空間戦闘攻撃機 コスモパイソン

玉盛それとあとは5式空間機動甲冑ですが、これも甲冑というより本来は装甲騎兵なんですよね。空間騎兵隊を装甲化したという発想だったので。

明貴装甲騎兵(笑)。

玉盛それは福井さんから、特定の作品名を連想させるからダメということで(笑)。

明貴前作の『2202』よりもかなり小型化されたんですよね。

玉盛そうです。徹底的に人間を意識して小型化したので、それこそ建物内の部屋まで入れるくらい、人間と同じような行動範囲を持つ空間騎兵のための装備という位置づけです。本編でもアニメーションらしく大きな動きで描かれているので、面白いデザインになったかなとは思います。

5式空間機動甲冑

──明貴さんは敵側となるデザリアムのメカデザインを担当されています。

明貴得体の知れなさというか、謎の敵としての不気味さがあるメカですよね。デザリアムのデザインコンセプトについては設定考証の小倉さんが福井さんのイメージを固めていて、それと僕がデザインを進めていたグレート・プレアデスとの整合性を取るために調整していったという感じです。グレート・プレアデスに関しては、旧作のイメージを踏襲することから始めています。原作からあまりにもかけ離れるのはリメイク物としてはいかがなものかと思うので、イメージを崩さないことを重視しています。ただ、そうは言っても『2199』から続くこのシリーズでは新しいデザインアレンジも取り込まれているわけで、今風というのか、新しいデザインをどうやって取り入れていくのかはかなり模索しました。実は福井さんから「暗黒星団帝国のメカを明貴さんが描いたらどうなるか見たい」というお話をいただいて、グレート・プレアデスを描いたのが始まりなんですよ。そのグレート・プレアデスのデザインが福井さんに採用されはしたんですが、旧作からのファンが観たいメカも欲しいということで原作版に近いプレアデスをデザインしたという経緯があります。だから2種類あるんですよね、プレアデスは。

リアルの追求と『ヤマト』らしさのバランス

──今作から3DCGでのメカ描写がより実写的になっていますが、デザインの段階から表現方法については調整作業があったのでしょうか?

プレアデス改級攻勢型戦艦 グレート・プレアデス

明貴制作の当初からこれまでとは違うルックにしたいという話は出ていたように記憶しています。いろいろ試行錯誤を重ねた結果、あの完成映像に落ち着いたと。

玉盛宇宙空間での明暗をあえてハッキリさせたり、新しい表現にチャレンジしているなという印象はありましたよね。最初はもっと固い感じというかカッチリした印象だったものが、次第に柔らかさが出たと思います。僕もディテールアップとして線を描き足すときに画面を明るくしてから描き込んだりと、画面での表現を意識して工夫しました。

明貴実写よりにするにはもっと線やディテールを増やしていく必要があるんですが、これはあくまでもアニメ作品ですからそこまでの情報量はいらないんです。とはいえ密度感のある画面にしたいとなったときに、設定画にディテールを描き足してしまうとデザインの作業が追いつかないんです。そこをCGで補完できないかという相談は当初から頻繁にさせていただきました。モデルに貼るテクスチャーのパターンは僕も考えたし、CGチームにもいろいろ案を考えもらって、デザリアム・ハンマーの表面やグレート・プレアデス、さらに今後登場する自動惑星ゴルバなどで活かされていると思います。ゴルバはとにかくデカイので、CGであっても作り込まなければならないところがあるんですよね。時間的な制約もある中で、メカの重厚感や巨大感が出せるようにCGチームとは何度もやり取りをした部分ではありますね。

──宇宙空間と地上でも見え方が変わってきますね。

明貴そうですね。その点、ヤマトは特に難しかったんじゃないかな(笑)。最初は明るい地球で、その後は暗い宇宙に行くから。ヤマトの艦体はグレーだから線を描き込んでも潰れてしまうし、単純にディテールを増やすだけでは対処できないところもありますよね。このディテールの話でいうと、今のCGの追求の仕方は実写の方法論なんですよ。それもありなのかもしれないですが、これまでのシリーズとは印象が違ってしまう。僕も途中で気づいたんですが、今のやり方は実写的な追及だから、これはやめようと。

玉盛メリハリは大切ですよね。

──制作の途中で、それぞれのデザイン案は共有されていたのでしょうか。

明貴いや、それぞれでデザイン作業をしていたのでほとんど見てないんですよ。

玉盛どういう風に仕上がったのかとか全然わからなくて困りましたよね(笑)。それこそ毎月一回の打ち合わせのタイミングでチラッと見せていただいたときに、ああ、こういうやり方があるのかと驚いたんですよ。カーデザインのようにコンセプトやフォルム、勢いのようなものを明貴さんはビジュアル化していたんですね。図面を引かないんですか、と聞いたらCGチームとのやり取りの中で決めていくというお話を伺って感銘を受けました。それと石津泰志さんは自分のためにやっていると仰っていて、自分が納得するために追及すると。

明貴パーツの整合性が取れないのはなぜだと言って、自分で3Dモデルを作って検証してからCGチームに渡していましたね(笑)。

玉盛そうなんですよ。僕はヤマトファンが喜ぶデザインを表現しようと考えていたので、皆さんはこういうやり方をしているのかと本当に勉強になりました。

明貴玉盛さんは最初に色を置いて、シルエットをある程度出してからディテール詰めていくというやり方をされていましたよね。

玉盛そうです。パースをなかなか出せなくて、明貴さんのやり方を見たらもっと早くにパースを描くべきだったと思いましたけど、自分は図面で見せるやり方が多かったんですよね。また、制作が始まったタイミングでコロナ禍になってしまったこともあって、現場でのやり取りが上手くできなかったということもありました。本来ならば設定画に描かれていないもの、自分の中で言語化できていないものが頭の中にあるんです。それを現場の方々と打ち合わせをしながら、画面の設計段階で共有して掘り下げていければ良かったなとは思います。あるいは脚本の段階でもそうなんです。人間ドラマが主軸であることは理解した上で、それでもテクノロジーが基盤にあるのがヤマトという作品だから、テクノロジー的にはどうなのかという面をもっと深めて共有できていたらと後になって思いました。もちろんデザイン作業の遅れで未確定だった部分を安田賢司監督はなるべく取り入れてくださっているんですが、前章ではできていなかったことを後章では反映できるように頑張りたいと思っています。

明貴後章は決戦シーンもあって、そこのカロリーがちょっととんでもないことになりそうですよね(笑)。僕の場合は異星人のメカニカルデザインではあるのですが、おおよそ人間型の知的生命体が作るものであれば、デザインの差こそあれ普遍的に共通点や共通構造があるだろうと思うんです。飛行機には翼があるだろうし、クルマには車輪がある。だからこそ、逆にセンスの見せ所であるとも言えますが、こういう分野はそれこそアメリカなどの古典SFアートの世界でさんざんやられてきていることでもある。そういうものを参考にしながらも、かと言って突飛なものを出すようなことはせずに『ヤマト』にあったものを提案するということが重要だと考えています。『2199』のときにビーメラ星人に代わる宇宙昆虫が登場したような、時代性にあったアレンジをデザイン面でも表現できたらと思います。

PROFILE

玉盛順一朗:たまもりじゅんいちろう
『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』にメカニカルデザイナーとして参加。ヤマトを含む地球側の宇宙戦艦などの各メカニカルデザインを担当した。シリーズ最新作となる『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』でも引き続き地球軍側のメカニカルデザインを担当し、ヤマト(第3次改装型)やドレッドノート改級などの艦船のほか、5式空間機動甲冑や試製空間戦闘攻撃機コスモパイソンを手掛けている。

PROFILE

明貴美加:あきたかみか
メカニカルデザイナーとして『機動戦士ガンダムΖΖ』などに参加。後にモビルスーツと美少女を組み合わせた『MS少女』のイラストを手がけた。アニメだけでなくゲームクリエイターとしても活躍しており、『銀河お嬢様伝説ユナ』シリーズではゲーム、アニメ、音楽CDなどメディアミックス展開をすべて手掛けている。『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』ではデザリアムやボラー連邦のメカニカルデザインを手掛けている。

シリーズ最新作
『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』
2021年10月8日[金]より劇場上映・Blu-ray特別限定版販売・デジタルセル配信
同時スタート!

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宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 公式サイト

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