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SDガンダム Blu-rayコレクションボックス発売記念『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』 森邦宏×鈴木健一 インタビュー

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「SDガンダム Blu-rayコレクションボックス」の発売を記念して、収録作品のスタッフへのスペシャルインタビューを敢行。 ラストとなる第3回目は、『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』の監督を務めた森邦宏氏と鈴木健一氏に話を伺った。『三国志』をベースにした物語やキャラクターの構築やCGと作画がミックスされた画面づくり、映像的なこだわりなどを語り尽くしてもらった。

──『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』(以下、『三国伝』)にはどのような経緯で関わるようになったのでしょうか?

僕はバンダイのプラモデルの店頭用プロモーションアニメの方に参加していまして。その作業が終わってしばらく経ってから、TVシリーズをやることが決まったからとお声がけいただきました。

鈴木僕は『SDガンダムフォース』からの繋がりで、プロデューサーの佐藤弘幸さんからお声がけいただきました。当初、『三国伝』は、三つの国の物語なので三人の監督を立てたいということで、ひとりが森さん、ひとりが僕で、それからもうひとり入れたいという話でしたね。もうひとりの方はスケジュールが合わずに結局二人でやることになりました。

──ということは、お二人で3つの国を分割して担当したということですか?

鈴木劉備チームを描く時は森さんがメイン、それ以外は僕が担当するという感じでした。ただ、それだとバランスが悪いので、たまに森さんに僕の方を手伝ってもらっていましたね。

コンテチェックは二人で分けてやっていましたね。でも、結局ラッシュのチェックとか音響関係は二人共同でやっていて。

鈴木そうですね。本当に一緒に作ったというか。森さんのジャッジで動いている部分もあれば、僕のジャッジで動いている部分もあるという感じで。

ただ、CGに関しては鈴木さんの方が詳しかったので、その辺りはお任せしていた部分もありました。

鈴木『三国伝』のCGディレクターは小高忠男さん(『SDガンダムフォース』CGモデル・スーパーバイザー)が担当されていたので、『SDガンダムフォース』の経験値を踏まえて取っ掛かりの部分だけはいろいろと細かく話せました。

──『三国伝』の物語はどのように作られていったのでしょうか?

鈴木岸本みゆきさんが構成をされていたコミックスがすでに存在していたので、それをベースに膨らませていった形です。コミック版よりも史実や三国志演義に近づけて再構成したり、それに関連した人物に合わせて新たなキャラクターを出して肉付けして行きましたが、基本的にはコミックスの「SDガンダム三国伝 風雲豪傑編」などの各章を踏襲しています。もともと、佐藤弘幸プロデューサーと岸本さんが先行して作っていたものをアニメ化して欲しいという依頼だったので。

ただ、アニメ化するにはお話を付け足さなければならなかったので、かなり足しながらやっていました。

──SDガンダムシリーズは『機動戦士SDガンダム』の手描きのアニメから『SDガンダムフォース』のフルCGを経て、『三国伝』では作画とCGを合わせたものへと進化していきました、そんな中で、SDガンダムのキャラクターの表現はどのような見せ方をしようと考えていましたか?

サンライズは『SDガンダムフォース』での経験値があったので、SDガンダムを3Dでどう観せてきたのかというところを参考にしつつ、みんなでいろいろと意見を出し合いました。例えば、今回は口パクをつけようとか、そういう話はしたと思います。

鈴木森さんが手掛けたプロモーションアニメは手描きでやっていたんですが、TVシリーズでやるには線も多かったりして作画作業が大変だろうと。そう考えると、やはり3DCGじゃないと難しいよねという話を佐藤プロデューサーが既に考えてたので、TVシリーズを見越した形で、3DCGをメインに使った『三国伝』のプロモーションアニメを僕の方で作らせてもらいました。そこでの作画的なアプローチと『SDガンダムフォース』からの経験値で、3DCGにするとどこがぶつかるとか、どういった動きが苦手か、手足をどのくらい長くするか、武器のサイズはどのくらいがベストか等、色々検証をしながらベースとなるCG用のキャラクターデザインをしてもらいました。それを森さんと僕でチェックしたりという感じでしたね。

表現もあまりメカっぽくしない方がいいだろうと思い、喋る時に目が光るとかじゃなく、初期のSDガンダムみたいに口をモゴモゴさせる方向にしました。それから、『三国伝』のプロモーションアニメをやってみて感じたのは作画の大変さですね。作画は、元のガンダムのサイズを縮めただけなので、頭身は低くても、描かなければならない線の数は一緒なんですよ。さらに、『三国伝』ではそこに鎧も着ているから、普通のガンダムよりも情報量が多くて。だから、3DじゃないとTVシリーズはできないなというのがありましたね。

鈴木本編では、作画のキャラクターもいますけどね。

3Dを起こせないチョイ役的なキャラは作画でやっているんですよね。

鈴木『三国伝』では、作画で描いたように見せるCGアニメとして作っているので、エフェクト絡みは全部作画でやってもらっています。また、レイアウトのラフ原画までは、従来のアニメと同じく作画でやってもらっていて。だから、映像の作り方としては、フル3DCGというアプローチではなく、作画で描いたらどうなるかというのをCGで肩代わりした感じで作っていますね。そこが『SDガンダムフォース』とは違うところで。あくまで、作画に3Dを使った作品であって、背景などの美術も描いてもらっているし、そういう作り方をしているんです。

──原案が『三国志』という中国の史実をベースにした作品でもあるわけですが、劇中でのキャラクターの見せ方などはどのようにアプローチしようと考えられましたか?

心がけとしては、「ちゃんと人が演じているようにしよう」という考え方でした。見た目は可愛いガンダムたちが芝居をしているわけですが、ドラマは人間の話でもありますので、ガンダムたちは人間だという捉え方でやりましょうということにしました。

鈴木見た目がSDガンダムなだけで、普通の作品で普通のキャラクターが動いているという形にしましたね。

この仕事を依頼された時にガンダムの話じゃなくて良かったと思っていたんです。「SDガンダム」というタイトルだけど、やっている内容は『三国志』なので。だからこそやってみたいと思って引き受けたのを覚えています。

鈴木森さんはずっとリアルガンダムのお仕事をしてきましたからね。

いろいろと関わってきたので、ガンダム的なお話での監督だったらやりにくいなと思っていたんですよね。

──原案である『三国志演義』に関しても、勉強をされたりしたんでしょうか?

僕は全然『三国志』に詳しく無かったんです。だから、自分でやることになってから、いろいろと本を読んだり、資料を集めたりしました。

鈴木同じくですね。シリーズ構成の浦畑達彦さんと岸本みゆきさんがめちゃくちゃ詳しかったのと、他のライターの人たちも詳しかったので、「演出面でこういうことをやりたい」と伝えると、彼らから『三国志』の史実で知っていることをいろいろ教えてくれるので、シナリオ打ちでいろいろと詰めていった印象がありますね。森さんと僕は無邪気に「こういうのを出したいんだ」、「こんな風に盛り上げたい」ということしか言わず、それをライター陣がうまく『三国志』の話として混ぜてくれました。

キャラクターの数がとにかく多いので、そこはライター陣を頼りにさせてもらいました。

──『三国伝』はCGと作画の融合という形ですが、作劇する上で印象に残っていることはありますか?

特に合戦シーンなどでは登場人物が多いので、この物量は作画では無理でした。これは3Dがよくやってくれたと思います。

鈴木9割は3Dでやっていますね。一部のキャラクターは作画ですが。集まっているアニメーターの皆さんがSD好きだったので、そこもすごく頑張ってもらいました。

──3Dと作画の馴染みもすごく良かったですね。

鈴木技術的には『SDガンダムフォース』からの蓄積があったということもありますね。また、僕がテクニカルディレクターとしてできなかったものを『三国伝』ではうまくできるようにしたいという気持ちがあったので、キャラクターデザインの発注の時には、その部分を気にしていたのを覚えています。

3Dの人たちが、作画に寄せる芝居とかをちゃんと付けてくれたんですよね。

鈴木そうですね。『SDガンダムフォース』では、モーションキャプチャーでキャラを動かしていましたが、『三国伝』では、シートのタイミングに合わせて、動きは全部手付けでやっていたので、作画との馴染みも良かったのかもしれません。手法としては通常のアニメのやり方ですね。

──エフェクトなども、派手で見映えがいい感じになっていましたが、撮影的な面ではなにかこだわられたところはあるのでしょうか?

お話は『三国志』なんですが、必殺技やプラモデル用に用意した天玉鎧(てんぎょくがい)などを使ったアクションはできるだけ派手にしたいと考えていました。撮影を担当していた会社が、制作スタジオの隣の建物だったので、コミュニ―ケーションが取りやすく、こちらの要望や問題点に関して、すぐに対応してもらえるのは良かったですね。

鈴木ちょっと何かあれば、すぐ隣に行ってやれましたからね。やっぱり、CGと作画の組み合わせがずれてしまうことがよくあったので、そうした部分で監督判断をすることも多くて、それにすぐに対応できたのが良かったです。あと、エフェクトも作画でやってくれてすごく綺麗でしたからね。

──キャラクターの動きでこだわった部分などはありましたか?

必殺技などは、アニメーターさんがラフ原画をしっかり描いてくれて、それに合わせてCGを作れば良かったので、そこは大変では無かったですね。むしろ、日常芝居にこだわっていました。SDのガンダムは普通に歩かせたりするのが大変だったんですよ。足が大きいので、一歩進むのでも足の長さよりも距離が進まなかったりするんです。そういう、見慣れた日常的な動きや芝居の方が大変でしたね。俯瞰の歩きなんかは特に苦労しました。だから、中盤からは足の接地が見えないような画角で見せるようになったと思います。

鈴木歩きに関しては、『SDガンダムフォース』でも苦労しました。ただ、アプローチが全然違っていましたね。『SDガンダムフォース』では、背景もCGで、作画的なアプローチじゃなかったので、いろいろと誤魔化せたので。

作画監督の牟田口裕基さんがラッシュチェックに参加してくれて、ちゃんとキャラの動きを見てくれていたんですよね。その結果、3Dがよりアニメっぽく動いてくれたんだと思います。

鈴木タメとかツメをしっかりするようリテイクを出していた覚えがありますね。

3Dキャラたちが使用する小物や巻物なんかも大変だったんですよね。作画の小物を3Dのキャラに持たせると、組み合わせなどが大変になるので、なるべく触らないようにするとか、そういう制約は設けていたと思います。だから、例えば何かを食べるために、本来3Dであるキャラの体ごと全部作画にしたシーンがあったりもしましたね。

鈴木逆におにぎりなどの食べ物をCGで作ったこともあったので、両方やりましたね。

──当時の現場の雰囲気などはいかがでしたか?

鈴木とても良かったですよ。『SDガンダムフォース』の時も、『三国伝』も良かったという印象しかないです。だから、僕はアベユーイチ監督、近藤信宏監督、森監督とは公私共に一緒に飲んだりさせてもらったりしていますからね(笑)。『三国伝』は15分番組でしたが内容が濃かったという思いがありますね。

そうですね。最初は、15分フォーマットの枠の中で起承転結なんてつけられないと思って始めたんですけど、やったらできるんですよね。15分1本を観たのに、30分観たような濃さを感じることができて。最終的には「世の中のアニメは全部15分になればいいのに」と思いましたから(笑)。その後、いろんな作品に関わりましたが、『三国伝』の経験から、30分フォーマットのアニメ(本編は約20分のアニメ)のなかで、物語を伝えるのに重要なのは10分ほどで、そこにいろいろと10分の肉付けを足して20分にしているという感じはありますね。

鈴木つまらない作品は長く感じるというけど、『三国伝』は面白いけど充足感が30分のアニメを見た感じになるんですよ。コンテチェックも半パートなのに、時間がかかりましたね。

作り方は30分フォーマットのアニメを作るのとそんなに変わらない感覚でした。本編は10分ちょっとだけど、結局打ち合わせもアフレコもダビングも30分物と同じ回数だけしないといけないから、あまり変わらないって。

──キャスト陣とのやり取りなどで印象に残っていることはありますか?

鈴木出演しているのが、梶裕貴さん、小野友樹さん、島﨑信長さん、安元洋貴さん、下野紘さんもいましたね。今となってみれば、すごく豪華で。キャスト陣はみんなすごく前向きで、アフレコ収録した後、みんなで飲みにいったら、「監督、あのシーンはどういうつもりだったんですか?」とみんな熱い感じで、仕事の話をしていて。そういう雰囲気も良かったですね。

あと、普通のガンダムのアニメだったら「ガンダムのパイロット役をやりました」って言うんですが、『SDガンダム』では「ガンダムをやりました」ですからね(笑)。みんな、「ガンダムを演じてる」って結構喜んでいましたよ。

鈴木あと、必殺技が言えるのも喜んでましたね。

キャスト陣は、SDガンダムが好きな人が多かったのも良かったですね。

──作りながら印象に残っていることはありますか?

作品全体として、熱いシーンが多いんですよ。史実を元にしているから、恩人や父親などが死んでしまうエピソードがいくつかあって。頭身の低い可愛いキャラクターで、よくあんなシリアスな芝居ができたなって思いますよ。‘泣き’の芝居はいくつもありましたね。

鈴木日曜の午前からこんな深刻な話をオンエアしていいのかって、当時は思うこともありました。思い出深いと言えば、最終話とその前の第五十話ですね。第五十話の放送予定が東日本大震災の翌日で、その日はさすがに報道特番になって。でも、一週間先送りになっただけで、翌週の2011年3月19日には第50話が、そして3月26日には最終話が放送されて。

無事最終話まで放送されましたね。当時は、放送は止まるんじゃないかと思っていたんですよね。

鈴木その頃、僕と森さんは『TIGER & BUNNY』の現場に移っていて、画面にL字型に報道情報が入った中で放送されたので、それを一緒に観たのは感慨深かったですね。

──改めて、SDガンダム Blu-ray コレクションボックスで連続して作品を観ることができるわけですが、発売を心待ちにするファンには、どこを楽しんで欲しいという希望はありますか?

どこが作画でどこが3Dか当ててもらうとか(笑)。あと、女官が妙に色っぽかったり可愛かったりします。村人や子供などにも人間臭さが感じられると思いますよ。

鈴木見た目はSDなんですが、実は骨太な作品になっているようにも思いますね。『三国志』を知らない人もで、その入門編としては見やすいと思うし。ただ、SDならではのガンダムネタも入っているので、そこは史実と違うところもありますが。気楽にハードなドラマを観ていただけると嬉しいですね。

お話は『三国志』なので、大河ドラマなんですよね。劇場版(超電影版)と合わせると52話分あるし、NHKの大河ドラマと同じくらいの熱量で、各話15分に濃縮してやれた作品です。その辺を楽しんでいただければと思いますね。

鈴木僕も自信を持っていい作品だと言えますので、ぜひ見ていただければという感じですね。外国で戦国時代の信長とか秀吉みたいなキャラクターを自国のロボットアニメで作り直すみたいなことですからね。外国の方から見たら違和感があるかもしれませんが、自分にとっては楽しい現場だったので、その楽しさはフィルムに伝わっていると思います。

PROFILE

森 邦宏(もり くにひろ)
アニメーション監督、演出家。『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』には監督として参加。『機動武闘伝Gガンダム』、『新機動戦記ガンダムW』、『機動新世紀ガンダムX』、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』、『∀ガンダム』、『ガンダム Gのレコンギスタ』では演出を手掛けている。監督としての代表作に『少年陰陽師』、『超速変形ジャイロゼッター』、『Phantom in the Twilight』などがある。

PROFILE

鈴木健一(すずき けんいち)
CGディレクター、アニメーション監督、演出家として活躍。『SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors』には監督として参加。代表作に『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ(シリーズディレクター)、『DRIFTERS』、『はたらく細胞』、『Fairy Gone フェアリーゴーン』などがある。

<発売情報>

SDガンダム Blu-ray コレクションボックス(特装限定版)
【プレミアムバンダイ、A-on STORE限定】

2021年11月12日発売
税込価格:¥42,900
品番:BCXM-1665

 


▼商品情報サイト 「SDガンダム Blu-ray コレクションボックス」V-STORAGE通信

▼「機動戦士SDガンダム」公式サイト
https://www.sunrise-inc.co.jp/sd-gundam/
「SDガンダムフォース」公式サイト
https://www.sunrise-inc.co.jp/sd_gundamforce/
「SDガンダム三国伝 BraveBattleWarriors」公式サイト
http://www.sdgundam3gd.net/

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