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TVアニメ『RE-MAIN』原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督:西田征史×清水みなと役:上村祐翔 インタビュー[前編]

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TVアニメ『RE-MAIN』がまもなく最終回放送! 本作の原作・総監督・シリーズ構成・脚本・音響監督を務める西田征史さんと清水みなと役の上村祐翔さんに、印象に残っているシーンや各キャラクターについて、アフレコ時のエピソード、最終回の見どころなど、多岐に渡ってお話を伺った。今回はロングインタビューの前編をお届けする。

失っていた記憶を取り戻したみなと――その変化に思うこと

──シリーズの中盤では、みなとが記憶を取り戻して以前の性格に戻るという展開がありましたが、そんな彼を上村さんはどのような気持ちで演じていましたか?

上村オーディションの時から途中で記憶が戻るのはわかっていたんですけど、本編では山南のみんなに心を開いて楽しく過ごしていた流れから突然シャットアウトするような掛け合いになっていくので、アフレコがめちゃめちゃしんどかったです。みなとは愛される主人公にしていこうと西田さんとお話していて、だからこそ記憶が戻った時のギャップが楽しめる部分になるかなと僕も愛を注いできたんですけど、ガラッと変わってしまった姿にはやっぱり驚きましたね。同じアフレコ現場の同じ空間にいるのに、自分だけが変わってしまった状況が辛かったです。
その中で救われたのは、第9話の記憶をなくしていたみなとからのビデオメッセージのシーンですね。8話までは過去の強かった時代のみなとが合間にときどき描かれていたけど、立場が逆転してしまったんだなぁと。でも、僕としては「みなと」という一人の人間の心の置きどころが少し違うだけというか、人生全体で見ればどちらも彼の一部だと捉えていたので、演じ分けについてはあまり意識しすぎないようにしていました。どちらもみなとで間違いないから、あとは臨機応変に演じていこうと。細かい調整は西田さんにディレクションしていただいたので、可愛らしい部分は可愛らしく、怒るところは思いっきり怒って、その振り幅を楽しく演じられたと思います。

──みなとの変化を描く上で、西田さんが意識されたことはありますか?

西田正直、脚本をそっちの方向に進めるかは最後の最後まで悩んだところでした。みなとが愛される主人公であればあるほど、それまでの彼がいなくなってしまうことは、観ている方の期待を裏切ってしまうのかなという思いもあり、怖かったですね。意識したのは、それまでのみなとを大事にすること。それまでの小6モードの彼が影響を与えることで本来のみなとが変わっていくというのは、前半の愛される彼がいてくれた意味にも繋がるので「1話から見せてきたみなとの存在を忘れない」っていうのを意識して作りましたね。本来のみなとも本質的には悪い奴じゃないし、ちょいちょい垣間見える人の好さもある。だけど、それが見えすぎてもいけないので、そういう繊細な部分を上村さんと擦り合わせました。「このシーンのみなとは、ちょっと嫌われることになるかもしれないけどシーンの意味合いとしてはこのくらい強めに出しておきましょう」とか、そんなやりとりをしていました。

──そうした繊細な描写が難しいところですね。

西田第8話と第9話は悪い方向に行ってしまいますが、それが全体のメリハリにもなるところでもありますし……でもどこまでやるかは……難しいところでした。

上村でも、記憶が戻ってからも山南のみんなに黙々とトレーニングする姿を見せたりして、本来のみなともいい影響を与えていたので、そこに彼の強さとかブレない軸を感じましたね。先行上映会の時、西田さんから「キャラクターを漢字一文字で表してください」というお題をいただいたんですけど、僕は咄嗟に「水」って答えたんです。結果的に、確かにみなとはみんなに浸透していくようなキャラクターだったなと。だから僕は変わる前と変わった後、どっちのみなとも好きですね。

西田みなともいいやつなんですが、彼は本当に周りにも恵まれていますよね。家族もそうですし、仲間も。ちゃんと受け止めてくれるメンバーだったから最終話のみなとの姿に繋がっていくことが出来た。この仲間の中だからこそこの物語が出来ました。

──ここまでを振り返ってみて、印象に残るシーンはどこですか?

上村第7話でジャージの文字が「変」になっちゃって、みなとは「このチームらしい」って言っていたのに、次の週には「ダッセェ」って言っていたところはビックリしました(笑)。オリジナルアニメだから、細かい部分がどう進んでいくのかは僕らも台本をいただいて初めて知るんですけど、あれは衝撃的でしたね。記憶を取り戻したとはいえ、主人公が全否定ですから。それまで少しずつ育んできた絆が、本当にちょっとしたことで崩れちゃうので、その繊細さが伏線として効いているなと思いました。
あと、僕は第5話が好きですね。栄太郎が水球部をやめようとしたことで、みなとは曙學館の備前監督にかつての自分について尋ね、「努力する才能」を持っていたと知らされる。それでみなとは「努力すればいいんだ」となって、栄太郎に「また僕に憧れさせてみせるから」と伝えるんですけど、そう言えるピュアさが本当に素敵で…。精神的にはまだ子供だから純粋ということもあるんですけど、そういう気持ちって忘れちゃいけないなと。まったくあざとくないから、すごくキラキラした王子様みたいだなと思いました(笑)。

西田あのセリフは物語の肝というか、テーマ的な部分も表しているからね。最初に書いた時は違うセリフだったのを直したんだけど、あのシーンには大事な何かが隠れている気がして、全編を通して印象的なセリフにしたいなと。たぶん他の物語では書けない、『RE-MAIN』だから書けたセリフ。自然な流れの中で成立して、みなとが純粋だからこそ言えるセリフだと思います。

──西田さんが印象に残るシーンは?

西田個人的な思い入れもあるので、部室のお風呂シーンですね。視聴者の方からは「なんで風呂に入るんだろう」って言われてましたけど(笑)僕の学生時代、実際の部室に風呂があったので、あれこそが自分にとっての「思い出の中の水球部」なんです。めっちゃ寒いプールで一生懸命練習をして、1時間くらいしたら温まりに風呂へ入る。そこで、みんなでフゥ〜って一息ついてあれこれくっちゃべってからまたプールへ戻る。そうした自分の人生における水球を象徴するシーンを再現できたことが、個人的には嬉しかったです。

上村実際にあんな風に狭い感じだったんですか?

西田結構ギュウギュウだったかもしれない。別にベタベタしたくて、あんなギュウギュウで入っているわけじゃなくて(笑)実際にああいう狭さだったんです。取材で日体大のプールへ行った時も、ちゃんと風呂エリアがあったので、あの設備は屋外プールのある水球部では基本なんだと思います。

上村あの狭さゆえの親密感がありますよね。

西田そうそう(笑)。あと、第6話の合宿も完全に僕の思い出のままですね。学校の教室に机を並べて、レンタル布団を敷いて、みんなで寝ていたのが思い出として残っているので…。合宿って、こんな雰囲気だったなぁと思いながら楽しんでいました。

アフレコ現場から見えてくる山南メンバーの裏話とは?

──では、山南メンバーのキャラクターやキャストの皆さんについて印象に残っていることはありますか?

上村第2話で、入部をやめようとする江尻を引き止める譲が「動機なんて何でもいいから!」と言うシーンは印象に残っていますね。あそこで一気に譲という人物が、これからみんなを引っ張っていく山南水球部のキャプテンなんだっていう印象がついて、頼もしさも感じました。あのシーンの譲は何回観てもウルッときます。
あと、細かいところだと授業中の網浜の朗読シーン。(斉藤)壮馬君はアフレコでは台本に書いてある倍くらいの長さを読んでいるので、どこまで本編で使われるのかなと思って(笑)。切りどころが難しいですよね。

西田そこはもう喋っている途中でスパッと切らせていただきました(笑)。セリフが収まったところでカットが変わるのではなくこのカットは喋っている途中でカットアウトだなと脚本段階で思っていたので。台本には余分に書いてあるんですけど、シーンが伸びたときの為に斉藤さんは自ら続きを書き込んでくれていたんです。

上村ウキウキしながらやっていましたよ(笑)。僕は網浜が好きですね。完全に“我が道をゆく”を突き進んでいて、あの真っ直ぐさがいいなと。クラスメートのみなとは、いつもその姿を後ろから見ているんですよね。

西田そうそう、斜め後ろから! 教室移動の時に、持ち物を指差し確認していたりしてね。映像でビシッビシッて音がついたらより“変な奴がいるぞ”的な印象になりました。自分的には、他に、家族とのやりとりの変化も印象的かな。みなとは第10話の冒頭で家族にかなり厳しい言葉をぶつけるわけですが……アフレコでは上村さんもブースの中で「キツイ…」って言っていましたね。

上村つい言っちゃいましたね……。ひどいやつですよ、ホントに(笑)。ただ救いなのは、清水家のみんなが本当にいい人たちなので、年頃の不器用さもある中で「自分こそ正しい」みたいになって強い言葉を使ってしまったみなとを、妹も含めて本当に柔らかく包んでくれていたのが良かったなと思いました。これは家族の物語でもありますからね。

西田みなとは自分が被害者だと思っているし、お母さんには息子を傷つけてしまった苦しみもあって、みんなそれぞれに辛いんですよね。最終話では試合だけでなく、そこに向けての家族のゴールもあります。上村さんにはそこまでの気持ちの流れのままに演じてもらっているから、上村さんの中から出たみなとの強さも印象に残っています。あと、他のキャストさんに関しても皆さん、本当に大好きな方々で素晴らしい演技をしてくださったので色々印象に残っていますが……んー、木村(昴)さんの第6話のウインクが下手な譲とか、ああいうセリフではない声を表現してくれるのが本当に巧いなと(笑)。

上村あそこは、さすが昴さんですよね(笑)。

西田西山(宏太朗)さんは第11話の「今の先輩が飛びつけるギリギリの高さで(パスを)出しますから」が、なんかいいなぁと思いましたね。あれは栄太郎だから言えるセリフだという説得力がありました。斉藤さんの見せ場は、最終話での網浜とモモ(百崎陸)の対決かな。今までの網浜とは違うボリュームの声が聴けてすごくいい。江尻はいつも熱血漢で人に突っかかっていくけど、自分に自信がなくて強がっている部分もある。第10話では彼の「自分基準で考えてたけど甘かったんだな」っていうセリフがあるんですけど、心から出てくる言葉の吐露として、古川(慎)さんがいい感じに表現してくださったなと思います。牛窓は、自分の気持を語っている第6話がいいですよね。彼の声のボリューム感は最初から難しかったと思うけど、廣瀬(大介)さんが巧く出してくれていたなと思います。畠中(祐)さんはどのセリフがというよりも、全編に渡って彼の穏やかな声が入ることで、7人の間をうまく取り持ってくれている感じがしました。声に人柄が乗っているというか、その雰囲気が独特だったなと。

──西田さんは以前、役者さんの地声の違いをキャスティングで意識したと仰っていましたね。

西田そうですね。同じセリフがあったとしても、それぞれの人が言えばどのキャラクターなのかわかるように、声そのもので違いを出したかったといいますか。皆さん巧い方々なので演じ分けもできるだろうけど、元々の声質の違いみたいなものを感じられたらいいなと思ったんです。もちろん声を作って出す表現もあるけど、この作品はそこではないなと。その瞬間、本当にその人が喋っていると感じられるようにやってくださる方、という基準で選ばせてもらいました。

──そんな皆さんのアフレコを受けて、影響を受けた部分もあるとか?

西田皆さんのお芝居には最初から手応えを感じていたので、アフレコは毎回楽しかったですね。一緒に作品を作っている感じがして。パッケージ(Blu-ray/DVD)特典のオーディオドラマは本編を録り終わった後に書いているので、キャラクターの立ち位置をキャストさんたち自身と重ねたりして書きました。

上村そのせいかオーディオドラマは、どんどんやりやすい感じになっていきました(笑)。

西田キャラクターたち一人一人が真っ直ぐで面白くて、とても魅力的だから、そこを余すところなく描きたいという思いもありました。オーディオドラマには、本編で書き足りなかった見せたい部分を盛り込んでいますね。パッケージのVol.1に収録されたオーディオコメンタリーで上村さんと木村さん、西山さんが喋っている内容を聞いて考えたネタもあるんですよ。

上村すごい!それは楽しみですね〜。

西田自分のキャラならああいうことしそうとか、いろいろ話されているから、そういうキャストの皆さんから生まれたものも形にしようかなと思って。それはVol.3に収録予定です。

上村ぜひパッケージを購入して聴いていただきたいですね。

──現在は少人数ずつ行われているアフレコですが、本作では上村さんが各シーンの共演者たちと録っていく形だったとか。

上村基本的に僕が掛け合いをやらせていただくシーンは、そのブロックごとに一緒に録っていく感じでした。以前だったらキャスト全員が同じ空間にいたので、その時のように他の方たちのお芝居を見られないのは残念ですけど、作品の中心にいる人間として、その空気感を可能な限り吸収できる形でアフレコできたのは有り難かったです。一方で、自分宛てのビデオメッセージを撮るシーンは完全な一人芝居だったので、そういう一人のシーンも印象深かったですね。自室にこもってベッドで泣いているとか、声にならない声みたいなアドリブ芝居も丁寧に録っていただきました。漏れ聞こえるようなかすかな声も、ディレクションを受けながら何度が録ったりして、一音一音を大切にしたからこその生っぽさを評価していただけたのかなと思います。

西田僕が本来やってきた実写の現場では、泣きのシーンではそのために演者さんに気持ちを集中してもらう時間があったりするけど、声だけだからといって「はい、じゃあ次は泣いてください」と言うわけにはいきませんよね。やっぱり人間としての生理を大事にしながら演じてもらうからこそいいお芝居が生まれるのであって、気持ちとゆっくり向き合えるように、演じる人のやりやすさを大事にして進めていったつもりです。今の上村さんのお話を伺うと、そういう作り方を受け入れて、上村さんも気持ちを込めてくれたからこそ、いいシーンができたんだなと改めて思いますね。

インタビュー後編はこちら!

PROFILE

西田征史(にしだ まさふみ)
脚本家、演出家。実写ドラマ、映画、舞台の脚本・演出を多数手掛けるほか、アニメ作品にも数多く参加。水球を取り上げたスポーツアニメ『RE-MAIN』では、原作、シリーズ構成、脚本のほか、総監督、音響監督も手掛けている。

PROFILE

上村祐翔(うえむら ゆうと)
埼玉県出身。劇団ひまわり所属。主な出演作に「文豪ストレイドッグス」(中島敦役)、「憂国のモリアーティ」(フレッド・ポーロック役)、「ビルディバイド -#000000-」(蔵部照人役)などがある。

<放送情報>

2021年7月3日より 毎週土曜 深夜1:30~
テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠にて放送

◆Blu-ray&DVD情報

RE-MAIN 1 (特装限定版)Blu-ray & DVD 2021年10月27日発売

発売・販売元:バンダイナムコアーツ

※特装限定版は予告なく生産を終了する場合がございます。
※Blu-ray&DVD各巻4話収録 全3巻/以降毎月一巻ずつ発売。
※各巻価格
 Blu-ray:11,000円(10%税込)/10,000円(税抜) 
 DVD:9,900円(10%税込)/9,000円(税抜)


TVアニメ『RE-MAIN』 公式サイト
https://re-main.net/

TVアニメ『RE-MAIN』 公式Twitter
@remain_anime / ハッシュタグ#re_main

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